研究課題/領域番号 |
17K04432
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
福田 廣 山口大学, その他部局等, 名誉教授 (20100977)
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研究分担者 |
福田 みのり 山陽小野田市立山口東京理科大学, 共通教育センター, 准教授 (10469330)
小杉 考司 専修大学, 人間科学部, 教授 (60452629)
小野 史典 山口大学, 教育学部, 准教授 (90549510)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 統制感の錯覚 / メタ認知 / 視覚的注意 / ベイジアンモデリング / 潜在クラス分析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は「統制感の錯覚」を鍵概念として,嗜好から依存にいたる連続体における閾値モデルを構築し,この閾値モデルに影響しうる状況要因の誘因価を評価しつつ,臨床的場面での応用が可能な介入方法と評価という枠組みを提供することである。 本研究は実験,調査,臨床的参与の三班が並走する形で進められている。今年度の各班の実績概要は次のとおりである。 実験班は,統制感の錯覚量に影響を与える独立変数として,視覚的注意に与える先行手がかりの影響に着目して実験研究を行った。実験では,先行手がかり法を用いた視覚的注意の実験データに対して認知モデルの1つであるDiffusion Decision Model(以下DDM)を当てはめた。この研究成果を日本心理学会第84回大会にて発表した。 調査班は,1000人規模のWeb調査を実施し,仮説モデルの検証を進めている。当初のモデルと一部異なる結果が見られたため,モデルの修正や分析方法の工夫をしながら,データの概要を洗い出すことができた。この成果を研究チーム全体で共有しつつ,モデル適合が不十分だった箇所について追加調査をする計画を検討している。 臨床班は,複線径路・等至性モデル(TEM)による質的データ分析を行い,個人ごとのデータ分析及び依存症の種類による共通点,類似点,相違点について考察する予定であったが,分析段階において進捗状況に大きな遅れが出ている状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験班は,新型コロナ感染症の影響により,対面での実験データの取得が困難になったため,進捗に遅れが生じている。 調査班は,臨床系専門家の助言を入れた調査票を作成し,調査データの分析を進めるのが当初の予定であった。しかし社会的な状況の大きな変化により,年度当初は十分な研究エフォートを確保することが難しく,また調査の実施に当たっても社会状況が落ち着くのを待ってからでなければ結果にバイアスがかかることが予想されたため,予定より少し遅れて調査を実施することとなった。こうした問題はあったものの,Webを介しての調査を実施することができた。集まった約1000件のデータを分析し,先行研究と同じような因子構造になっていることが確認されたが,当初考えていた分析モデルの当てはまりが十分ではなく,分析計画の修正を余儀なくされた。改めて個々の項目や因子構造,計算方法の見直しを図り,回答データをいくつかの潜在的なクラスターに分類する質的分類アプローチと,分類されたグループの中での量的統計モデルを組み合わせる方向での分析を進めている。 臨床班は,面接調査の追加、またはデータ分析を進める予定であったが,新型コロナ感染症の影響により病院における追加データの取得は困難であると判断するに至った。また,データ分析においても分析協力予定者の職場(病院)の状況が厳しく,進捗状況に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
実験班は,実験者と実験参加者が距離を保った状態(オンライン含む)で実験を行うなど,感染症対策をとった上で実験データの取得を行う。 調査班は,調査データの分析を進め,今年度のなるべく早い段階で結果の概要をまとめ,研究チーム全体にフィードバックする予定である。また,いくつか当初の想定になかったパターンが見られた点について,追加調査を行う必要を行う必要があるかもしれない。これらの知見については今年度中に学会報告や論文などの形で成果としてまとめていく予定である。 臨床班は,遅れている調査データの分析を進め,結果の概要をまとめ発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験班は,新型コロナ感染症の影響により,対面の実験が一時停止となったことから,謝金等が次年度使用に持ち越されることとなった。また,実験の一時停止に伴い,学会発表に関しても,次年度の心理学会への参加に変更を計画し,次年度に残すことを考えて次年度使用額が生じた。 調査班は,新型コロナウイルスによる世界的な社会状況の変化により,当初予定されていた国際学会が延期,また国内の移動も制限されたため,計上していた旅費のほとんどが執行できなかったのが主な理由である。一方で,クラウドを利用したデータ収集やミーティング環境,分析環境の統合など,オンラインでのツールにかかる経費が別途必要になっているため,これらを視野に入れつつ柔軟に対応する。 臨床班は,新型コロナ感染症の影響によるデータ分析の遅れにより,分析協力予定者に対する謝金等が次年度に持ち越されることとなった。また,予定していた学会等における成果発表を行うことができなかったため,成果発表を行うための費用として使用する予定である。
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