研究課題/領域番号 |
17K04432
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
福田 廣 山口大学, その他部局等, 名誉教授 (20100977)
|
研究分担者 |
福田 みのり 山陽小野田市立山口東京理科大学, 共通教育センター, 准教授 (10469330)
小杉 考司 専修大学, 人間科学部, 教授 (60452629)
小野 史典 山口大学, 教育学部, 准教授 (90549510)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 統制感の錯覚 / メタ認知 / 信頼障害仮説 |
研究実績の概要 |
実験班は,統制感の錯覚現象として,カフェインを摂取した状態に近づくことで,認知機能が一時的に向上する現象に着目して実験研究を行った。実験では,エナジードリンクの手がかり呈示により欲求および認知課題成績に影響が認められる可能性を調べた。実験の結果,欲求およびつけた認知課題の遂行速度において違いは認められなかったが,正確さにおいては,手がかり呈示群の方が手がかりなし群よりも高かった。 調査班は,調査データをもとに分析を深化させ,投稿準備中である。調査は主にアルコール依存に領域を特定し,その他の依存対象についての傾向性をも含めてさまざまな心理変数と共に調査を行ったものであった。調査の結果,メタ認知は衝動性と不確実さ不耐性の両方に影響を持っており,両者の概念を統合する心理変数として想定可能であること。また,仮説段階で大きな影響力が期待された衝動性と不確実さ不耐性は,依存傾向の高さに影響力を持たなかったものであること。最後に,先行研究と合わせて考えると,この2変数は依存症として症状が悪化してから現れる結果変数として捉えるべきであること,である。 臨床班は, これまでに得られたデータをもとにアルコール依存症者とギャンブル依存症者に共通する依存の過程について考察を深めた。依存症を自覚するようになってからは,心理的葛藤が大きいことや「やめ続ける」ことの難しさについては,両方の依存に共通する依存の過程であると考えられた。また,自助グループへの継続的な参加により,自助グループが自分の居場所のように感じることができることが,やめ続けることになっているという点も共通する径路であると考えられた。これにより,依存症となる過程においては「他者との関係性」が一定の影響を与え,「他者不信から他者への信頼の回復」が依存症の種類に関わらず重要な鍵となることが示唆されたと考える。
|