研究実績の概要 |
本研究の目的は,Finn(1997,2007)が考案した欧米で臨床的有効性が確認され普及が進んでいる治療的アセスメントの本邦導入に際し,本邦の医療体制や心理臨床業務の現状に合った短縮版を作成し,その効果検証を行うことである。本邦においてRCT(Randomized Controlled Trial;無作為化比較対照試験)研究が行われていない領域であり,本研究ではRCT研究を行い実証的な知見を提示する。 本研究の成果として,まず,Miller et al.(2013)同様、必要最小限のステップとされているステップ1(初回セッション),2(標準化された検査施行セッション),4(まとめと話し合いのセッション)を抽出し,先行研究・書籍を参考に,治療的アセスメント群,従来の情報収集型の伝統的アセスメント群,両群の実施マニュアルを作成し,予備調査,第三者評価を経て,マニュアルを修正し完成させた。 次に,完成したマニュアルの効果検証として,研究協力者を無作為に両群に割り付け,ステップ1,2を1回目,3週間後の2回目にステップ4を実施し,各ステップ後に面接評価尺度SEQ-5(塚本,2010)を実施した結果,伝統的アセスメント群18名よりも治療的アセスメント群14名の方が「肯定感」を促進するアセスメントが行われていたことが示され,令和2年度日本心理臨床学会第39回大会にて口頭発表した。 その後,先行研究同様,RCT研究の実証性に足る各群30~35名の効果検証を目指し研究を継続していたが,COVID-19感染拡大により中断,再開後最終年度までに各群22名(男女各11名)の実施に止まった。分析結果は群間に統計的に有意な差が認められず,各群の研究協力者や実施者の質の偏り,協力者数不足等様々な原因が考えられるため,予定の人数まで研究を継続し最終結果をまとめる。さらに,最終年度に完成したステップ1,4の録音の逐語録に今後実施分を加え,治療的アセスメント短縮版の効果について質的研究を行う予定である。
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