研究期間全体のうち前半の調査では、医療、福祉、コミュニティ、教育など様々な領域で不登校児の支援を標榜する施設を対象にインタビュー調査を行い、不登校にある子どもの回復プロセスについてモデル化することを試みた。その結果、支援施設ごとに「回復」の意味するところは様々であっても、その過程においてスタッフの献身的な関わりから仲間関係へと拓かれていく経過が多くの施設で見いだされた。 最終年度を含む後半の調査では、年代に応じた回復過程の違いや共通点を明らかにすることを目的に、不登校経験者を多く含む、義務教育終了後の年代を対象とした社会への移行支援の場における支援施設を対象に調査を行なった。具体的には、福祉領域にある若者就労支援を行う施設と、教育領域にある単位制・通信制高校のスタッフへのインタビューの結果を分析し、不登校経験者への支援とその回復過程について検討を行なった。その結果、義務教育年限にある子どもたちを対象とした支援施設と同様に、「回復」の意味するところは様々であっても、スタッフとの関わりを軸として仲間関係へと拓かれていく経過が見いだされた。最終的な進路を「就労」、または「社会とつながりながら自立的な生活をすること」を目標とすると、人との関わりを継続的に維持できるようになることは大切な要素であり、単に生活習慣や仕事の技術を身に着けることだけでは解決しない側面がある。そのため、就労支援の場では仲間づくりを促すためのプログラムを工夫したり積極的にスタッフが人と人とをつなぐ関わりを行なう様子が語られた。 すべての調査結果を踏まえると、支援領域において、または発達段階によってその支援の目的やツール、支援者の回復観は異なるものの、「回復」と支援者がみなす状態に向かう過程には仲間関係からドロップアウトした対象者が再び仲間関係へと拓かれていく様子が語られる点で共通していることが明らかとなった。
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