研究課題/領域番号 |
17K04442
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
原田 隆之 筑波大学, 人間系, 教授 (10507742)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 性的アディクション / 性犯罪 / リスクアセスメント |
研究実績の概要 |
本年度は,主に性的アディクションのアセスメントツールの開発に取り組んだ。既に作成した試作版のアセスメントツールを基に,項目の見直しや教示方法の改善等を実施した。 本ツールは,世界各国で最も幅広く活用されているStatic-99という性犯罪者リスクアセスメントツールの日本語版であるが,わが国の性犯罪者の特徴,刑事司法システムや社会的背景の違いなどに留意しながら,原著者からの許可を得たうえで翻訳を実施したのち,バックトランスレーションを経て,日本語版を完成させた。 そのうえで,性的アディクションのうち,痴漢・盗撮などの性犯罪に該当する問題を有する男性で,医療機関への受診をしている90名を研究参加者として,アセスメントツールを施行した。さらに,年齢,学歴,職業,家族構成などのデモグラフィック項目に関する情報や,初発年齢,罪名,逮捕歴,受刑歴など問題に関連すると考えられる情報の収集も実施し,問題性との関連とその大きさを検討した。 まず,信頼性については,α係数を算定したところ,十分な値が得られた。また,因子分析を行い,因子構造を検討したところ,3因子構造が確認された。リスクレベルと他の変数の項目に関しては,痴漢を行った者,初発年齢が低い者,単身で無職である者のリスクレベルが高いことが確認された。 これらに加えて,性的アディクションとそのアセスメント,および治療に関して,文献を収集するとともに,世界的な犯罪心理学の教科書の翻訳にも取り組んだ。さらに,レビュー論文などを発表した。このことは,最前線の研究の動向を知ることに役立った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定どおり,アセスメントツールの開発,修正が完了し,ツールが十分な信頼性を有することが確認できた。また,リスクレベルと関連のある変数を見出すことができた。 さらに,今後の研究において,治療プログラムの開発に当たっての有用な知見を得ることができ,研究フィールドも確保できた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,性的アディクション患者の治療を実施している医療機関において,アセスメントツールを用いたリスクの査定およびフォローアップ,治療プログラムの開発と評価研究を行う予定である。実施医療機関においては,既にパイロット研究を実施しており,協力体制も確保できている。 2年度目においては,プログラムの開発を進めるとともに,臨床研究に向けて,ランダム化試験のデザイン,アウトカム評価項目の決定などを行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究が比較的スムーズに進行し,アルバイトの雇用など人件費の必要が最小限であったことに加え,研究機関を移った直後で適切な人材が見つからなかったことなどにより,人件費の執行ができなかった。
|