既に開発した性犯罪者用リスクアセスメントツールに関して,医療機関に通院中の性的アディクション患者を対象に,その信頼性や妥当性の検討を実施した。インフォームドコンセントを得たあと,カルテ等の記載事項を基に,研究者とは別の独立した看護師,精神保健福祉士などの医療スタッフを研究協力者として,ツールに関する説明を十分に実施したうえで,記入してもらった。研究参加者の患者には,同じ医療機関での治療プログラムを継続的に受けてもらい,その間の再犯イベントを観察した。再犯は,自己申告,家族からの報告,逮捕などによる情報を基にした。 その結果,尺度の因子構造は2因子であることがわかり,十分な信頼性が確認された。また,リスクレベルが高くなるごとに再犯率が有意に高くなっていることがわかった。AUCを算出したところ,十分な予測妥当性を有していることが確認された。 治療プログラムについては,治療待機群との比較の結果,治療群のコーピングスキルが有意に向上したことが示され,一定の効果が見いだされた。 さらに,前年同様,性的アディクション患者の自助グループとの連携を進め,グループの見学,スタッフやメンバーとの意見交換なども積極的に行った。自助グループでは,メンバーからのナラティブを収集し,性犯罪に限定せず,ICD-11に新たに収載されることとなった「強迫的性行動症」の症例を記録した。今後,強迫的性行動症を対象に含めた治療プログラム開発の重要な資料とすることができた。
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