研究課題/領域番号 |
17K04443
|
研究機関 | 目白大学 |
研究代表者 |
高橋 稔 目白大学, 心理学部, 教授 (10341231)
|
研究分担者 |
菊地 学 目白大学, 心理学部, 助教 (30823447)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | エクスポージャー / 認知行動療法 / 視覚的注意 / アイトラッキング / 結果のフィードバック |
研究実績の概要 |
これまで研究テーマとして取り組んできたアクセプタンス&コミットメント・セラピーが展開されたことにより,不快刺激を回避せずに十分に体験すること(アクセプタンスやマインドフルネス)や,(単に症状改善のためではなく)QOLを高めることを目標としたエクスポージャー法であること,不快な体験における言語の役割の再認識する,など新たな観点が提案されるようになった。このように不快刺激に暴露されている最中の機序について,詳細に検討することはエクスポージャー法の効果を高めるため重要である。 本研究は臨床心理学分野におけるアイトラッキング装置を用いた研究であり,提示された刺激に視覚的注意が向いた時間や回数,継時的な変動の様子を観察する手法をとる。本研究では,この装置を用いて,不快刺激にさらされている際の視覚的注意を観察・記録し,その結果を対象者にフィードバックすることによって,その後の注意がどのように変動するかを検討することを目的とする。アイトラッキング装置を用いた研究分野では,視線の移動が視知覚や認知において重要な役割を持つアクティブなプロセスであるととらえており(フィンドレイ&ギルクリスト,2006),これを臨床応用を目指している。 主に2020年度は,実験計画を立て実際に実験を開始したが,コロナウィルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の影響を受け,中断をしている。一方で,2020年度は先行研究をまとめると同時に,これまでの研究成果を再度分析し,エクスポージャー中の視覚的注意の様子を再検討した。その結果,これまでの立場と同様に,主観的な不快さの得点の大きさによって,注視方略が異なっていることが示唆されたが,より恐怖を抱えるものに対して行ったエクスポージャーで特定の視線のパタンが確認されており,あらたな成果として確認できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は研究代表者が継続的に取り組んでいる研究課題である。2020年度は既に実験実施段階に入ったものの,コロナウィルスの感染拡大の影響を受け,実験をたびたび中断せざるを得ない状況にあった。そのため,本研究費の期間を延長し,継続的に実験を進める予定になっている。また,本研究計画の1年間延長を申請したために,この点についてのあらためて倫理審査を行う必要がある。 なお,2019年度より分担研究者として招いた菊地氏に加え,国内外の研究者に具体的にこれまでの研究成果を具体的に示しながら,意見交換を進めている。その中で,エクスポージャーを対象とした研究,あるいはアイトラッキング装置を用いた心理学的研究の基本的な事項を確認しながら,この領域における問題や課題等についても協議を重ねている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では,不快刺激を一定時間提示した際に,観察される視覚的注意の変動(誘導と維持)を記録し,結果を対象者にフィードバックする。そして,対象者がこれをモニタリングすることによって,エクスポージャー課題に与える影響について検討することを目的とする。このフィードバックするパタンとして,フィードバックする結果をもとにいくつかのパタンに分けて実施し,その影響による差を検討するという計画である。これまでの研究の成果や先行研究を参考にすると,エクスポージャーの効果を直接的に促進させるような影響に加え,エクスポージャーに挑むクライエント(対象者)の態度においても影響を与える可能性が示唆される。そこで,この点についても研究計画に組み込んだ手続きを準備した。なお,コロナウィルスの感染拡大に伴い本研究期間を延長したがために,現在は所属機関の倫理審査を再提出している。 実施にあたってはこれまで同様に運営スタッフの雇用が必須となる。また,研究結果の解析についても,刺激別にいくつかのローデーターを抽出したのちに,統計処理をかけていくような過程を踏む予定である。このことを踏まえ,研究課題の円滑な運営,対象者への説明と契約,データ処理等にあたっては,研究補助アルバイトとして雇用する計画である。 また,得られた成果については,国内外の学会等へ参加・発表し,関連する研究者と議論したり,関係学会等へ研究成果として投稿したりしていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
【理由】コロナウィルスの感染拡大による緊急事態宣言に伴い,研究を中断せざるをえなかった。そのため,2020年度は補助金を使用していない。
【使用計画】海外での学術集会参加のための出張費は大幅に削減される予定である。その分はアイトラッキング装置のメンテナンス費用(プログラムの更新費用)として充てる予定である。
|