研究課題/領域番号 |
17K04445
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
河野 千佳 日本大学, 文理学部, 准教授 (90348433)
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研究分担者 |
和田 佳子 聖徳大学, 看護学部, 教授 (50293478)
櫻井 薫 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, その他, 助教 (80779744)
横田 正夫 日本大学, 文理学部, 教授 (20240195)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 母性心理学 / 対児感情 / 母子画 / 助産師 / 保健師 / インタビュー / 連携 / 協同 |
研究実績の概要 |
研究方法1として産科外来を受診中の妊婦と出産後入院中の褥婦、1か月検診で来院した母親を対象に実施した、母子画の特徴と質問紙調査(対児感情評定や母性不安や出産体験の振り返り、マタニティ・ブルーズ傾向等)への回答の結果から、妊娠期から産褥早期の妊婦・褥婦の心理状態の分析している。その中から褥婦における色彩円環家族イメージ画の特徴を分析し、イメージ画に表わされる母子の関係性を、母子を表す円の包摂という形態と選択された色の特徴との関係から明らかにした事柄について、第19回ウーマンズヘルス学会学術集会にて口頭発表を行った。 さらに研究方法2として妊産褥婦にかかわる専門家である助産師・保健師を対象に、妊産褥婦の外来・病棟での様子や出産して退院後の健診、保健センターが実施している家庭訪問時の母親たちの様子など、現代の妊産褥婦の特徴や助産師・保健師の対応の困難感や工夫について半構造化面接にて聴き取った内容から、現代の妊産褥婦は援助が必要なのに自覚がないことや相談行動がとれないこと、産後の新たな生活に対応できずに、それまでの生活に固着して育児が思い通りにならない状況に対応しきれずに、褥婦自身ではコントロールできない一種のパニック状態にあることを明らかにしてきた。 これらを踏まえて、病院に勤務している助産師や地域の母子保健センター等にて産後の戸別訪問事業等に携わっている助産師・保健師に声をかけて研究報告会を開催し、意見交換を実施した。研究報告会ではこれまで妊娠期から産後3か月までの間の妊産褥婦を対象に実施してきた母性心理質問紙や心理指標、対児感情、母子画や円環家族イメージ画の描画特徴の研究結果について報告した。さらに助産師・保健師に実施したインタビューで得られた内容から、現代の妊産褥婦の特徴について報告し、それらを踏まえて、助産師・保健師がとらえている現場での妊産褥婦像について意見を交わした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染拡大の影響で、研究活動を縮小せざるを得なかった。 しかし、その中で、研究報告会をWeb会議にて開催し、病院勤務の助産師と地域で戸別訪問事業等を通じて産後の相談業務を行っている保健師の計8名の参加があった。両者ともに、妊産褥婦の心理的特徴について強い関心を持っていることが分かった。とくに、ハイリスク、産後うつ病だけでなく、現代の妊産褥婦の自我の脆弱さという特徴があることについては、関心が強かった。しかし助産師と保健師とでは妊産褥婦への視点が異なっており、また、所属する機関によって妊産褥婦の状態が異なるため、今回の意見交換の場ではそれぞれの立場からの主張に終始してしまい、統一した見解を導き出すのは困難であった。 この研究報告会にて助産師も保健師も心理職からの視点や見解を求めていることが改めて明確になり、今後は事例を通じた検討もできるのではないかと考え、検討する。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は母性心理学研究会として、令和2年度の研究報告会に参加したメンバーとは異なる助産師・保健師に声をかけ、対応困難であった事例やこれでよかったのかと気になる事例を持ち寄り、助産的立幅からの見方に加え、心理学的見地からの意見をフィードバックしながら、事例を検討する機会を計画している。そのため、現在m病院・産院に勤務している助産師を中心に声掛けをし、日時の調整をしている。 そして、妊産褥婦に実施した母子画の内容と質問紙調査(対児感情評定や母性不安や出産体験の振り返り、マタニティ・ブルーズ傾向等)の結果をまとめる作業と、母子画・円環家族イメージ画の特徴と心理的指標との関連をまとめる作業を研究者がそれぞれ分担して行う。 これらを通じて、助産師・保健師が妊産褥婦や母親たちへの対応で問題や困難に感じている事柄と、保健師が母親たちへの対応で問題や困難に感じている事柄とを抽出したこと、これまでの研究結果との一致している点や異なっている点、現場のニーズについて明らかにしてきた事柄をついて、心理職としてはどのような提言ができるかについて検討し、実現可能な対処方法を考えていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス拡大の中、どうしても研究活動を縮小せざるを得なかった。そこで次年度に事例検討を中心とした研究報告会の開催と、研究成果のまとめ作業に使用する物品等の購入に充てる計画である。
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