研究実績の概要 |
これまでに以下の組み合わせでメタ・スーパーヴィジョンの実践とそのプロセスおよび効果の分析、検討を進めてきた。 スーパーヴァイジー(SVee)6名:20歳代の臨床心理士もしくは大学院生、スーパーヴァイザー(SVor)5名:30歳代から40歳代でSVorの経験が初めてかもしくは少ない臨床心理士。これらに対してメタSVor(50歳代の臨床心理士でSVor経験20年以上、メタSVor経験5年以上)1名。スーパーヴィジョンの対象となった事例は、医療機関や大学の心理相談室、公的機関の従業員相談室等の事例であった。 すべての事例と組み合わせに関して、まずメタSV無しのSV数回をおこない、カウンセラー自己効力感測定の後に、2,3回のSVごとにメタSVの実施を3回繰り返す。そして再びカウンセラー自己効力感測定と振り返り用紙の記入を求めた。また、すべてのセッションを録画・録音し、さらに毎回のSVとメタSV終了直後にSV満足度尺度、SV作業同盟質問紙を実施した。 当該年度の新たな結果としては、SVeeの課題や特性をメタSVで検討した結果、そのSVeeの特性や課題に合わせたSVの必要性が明確となった。すなわちそれは、より効果的な技法を導入したり、不安や自信のなさに焦点化した指導を含む、「心理療法やカウンセリングとは何か」という基本的な命題に取り組んだり、最新の技法や理論を取り入れたりなどの新しい動きにつながり、より大きな効果が得られた組み合わせが見られた。 また、新たに得られた示唆としては、SV経験の多くない中堅SVorがSVeeに合わせた今後の訓練や研修の方向性までを決めるのは負担と責任が大きすぎるため、これらに関しては、学会等のレベルでの研修会が必要だろうということである。
|