平成29年度~令和3年度にかけて、定型発達の子どもとその母親のペア16組と発達障害を持つ子どもとその母親のペア7組が研究に参加することに同意した。合計23組の親子ペアについて、情緒応答性の評価のための録画と評価を行い、その結果のフィードバックも行った。大人の側と子どもの側の情緒応答性については、Biringen Zらの方法に従って、ビデオを観察して、母親の「感受性」「構造化」「侵入性」「敵意」、子どもの「反応性」「関わり合い」の6次元で評価し、さらに親子の情緒応答性の総合的評価であるスクリーニング尺度での評価も行った。定型発達の子どもとのその母親のペアについては、母親自身の被養育体験についての面接も行い、情緒応答性の評価のフィードバックの後に情緒応答性の評価をもう一度行った。最終年度の令和3年度は、主にビデオ録画についての情緒応答性の評価と面接内容の質的研究法による解析を行った。 今回、評価を行った合計23組の子どもとその母親は、情緒応答性が全般的に高く、侵入性や敵意がなく、感受性、構造化の得点も高い母親が多かった。情緒応答性が著しく低く、ネグレクトや虐待の可能性が疑われる親はいなかった。発達障害を持つ子どもの親の中で1名は、やや侵入的で敵意もやや高かく、支持的親面接の提供が必要と考えられた。 定型発達の子どもの母親の被養育体験の面接結果をKJ法で統合したところ、「安定した養育」「両価的養育」「不安定な養育」の3つに分類された。「不安定な養育」を経験した親の情緒応答性が低い傾向が認められた。また、定型発達の子どもとその親については、情緒応答性の評価結果をフィードバックした結果、情緒応答性の評価が上昇したのは10組で、低下したのは6組であった。 以上の結果から情緒応答性の評価とフィードバックが発達障害の親への支援の際に役立つ可能性が示された。
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