研究課題/領域番号 |
17K04457
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研究機関 | 東京家政大学 |
研究代表者 |
三浦 正江 東京家政大学, 人文学部, 教授 (00330134)
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研究分担者 |
岡安 孝弘 明治大学, 文学部, 専任教授 (40224084)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 原発事故 / 避難 / 仮設住宅 / 小中学生 / メンタルヘルス / インタビュー調査 / M-GTA |
研究実績の概要 |
本研究では、原発事故によって福島県内の仮設住宅に避難した児童生徒を1年以上支援した経験のある支援者8名に対してインタビュー調査を実施した。得られたデータを用いてM-GTAによる分析を行った結果、合計36の概念と17のカテゴリーが生成された。各概念とカテゴリーの関係について概観されたプロセス全体のストーリーラインは以下のとおりである。 震災からまもなくの時期には,児童生徒は《震災と原発事故による日常生活の崩壊》や《震災・原発事故まもなくの時期に親が抱える困難》といった環境要因の影響を受けながら,《子どものストレス症状と適応状態》といった諸反応を示す。このような児童生徒に対して,支援者は《子どもに対する様々な支援》を行い,それによって時間の経過とともに《支援によって子どもが落ち着いていく》状態がみられる。 しかし,《震災と原発事故による日常生活の崩壊》は,『あるべき体験の喪失』『仮設住宅の物理的・心理的なストレス』『原発事故に特有の心理的困難』といった《子どもを取り巻く環境》として継続し,《震災・原発事故から約3年後の子どもの状態》に影響を及ぼす。同時に,《家庭や親の影響力の大きさ》や支援者からの《丁寧な個別支援》などの影響も受けながら,《震災・原発事故から約3年後の子どもの状態》としては『徐々に回復する様子』がみられる一方で,『子どもの問題の顕在化』もみられた。 さらに《子どもを取り巻く環境》や《家庭や親の影響力の大きさ》は継続して児童生徒に影響を及ぼし,震災から5年程度経過した時点においても《5年経過時点でも残っている困難》がみられた。それに伴って支援者の《丁寧な個別支援》が継続されると同時に,震災から5年経過という時間の流れとともに,支援者の支援方針は《これからの支援》として徐々に変化しつつあることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度はインタビュー調査のデータ収集が終了し、M-GTAによる分析と論文投稿執筆を開始した。研究成果の一部は国内学会で発表も行い、順調に研究が進行していると判断される。一方で、平成30年度の研究準備が予定より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では、福島県内の小中高等学校教諭を対象としたインタビュー調査を行うこととなっている。しかし、対象者自身が被災者である場合も多く、研究協力者を確保することは容易ではない。また、平成29年度の研究実施状況を踏まえると、インタビュー実施の日程調整も容易ではなく、データ収集に時間を要することが予想される。そのため、インタビュー調査だけでなくWeb調査等の選択肢も視野に入れながら、適宜より現実的な研究計画に変更しながら進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に購入予定だったノートPCの購入が不要となったこともあり、予定より支出額が小さくなった。平成30年度にはインタビュー調査に加えてWeb調査の実施も視野に入れており、そのための経費として支出を予定している。
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