研究課題/領域番号 |
17K04458
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研究機関 | 東京家政大学 |
研究代表者 |
福井 至 東京家政大学, 人文学部, 教授 (10208928)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 認知行動療法 / eメール・カウンセリング / SE特有の不合理な信念 / SE特有の否定的自動思考 / カウンセラー養成プログラム / 産業カウンセリング / テレワーク |
研究実績の概要 |
本研究はこのようなインターネットを用いた認知行動療法(以下iCBTと略記する)と、メール・カウンセリングを組み合わせ、SEのメンタルヘルス問題を解決できるシステムを構築することを目的とした。2017年は、SEのメンタルヘルス・ワークブックの内容が実施できるiCBTプログラムを加えたシステムを完成させた。また、認知行動療法をベースとしたeメールカウンセリングを行う、産業カウンセラー19名の養成を行った。そのeメールカウンセラーを養成したプログラムに関して、「福井至・梅景正・熊野健志・遠藤美穂・粟竹慎太郎 (2018). SEのためのCBTベースのeメール・カウンセラー養成プログラムの効果検証 東京家政大学附属臨床相談センター紀要, 18,71-91)」として論文にした。さらに、富士通から共同研究費と、公共事業部門のSE100名の実験協力が得られたため、50名を実験群、50名を統制群とする実験を実施した。実験期間は、8月中旬から11月中旬までの3ヶ月間であった。各質問紙尺度について被験者内1要因被験者外1要因の分散分析の結果、SEIBSで測定した自己犠牲得点で交互作用が有意であり、統制群には変化がなく、実験群のみプリテストからポストテストへ低減したこと。また、SEATSで測定したSEとしての自己否定得点も交互作用が有意であり、やはり統制群には変化がなく、実験群のみ低減し。つらに、BDI得点も交互作用が有意であり、統制群には変化がなく、実験群のみプリテストからポストテストへ低減したことが示された。以上の結果から、今回開発した「SEのためのCBTベースのeメール・カウンセリング」システムには、SE特有の不合理な信念を低減し、SE特有の否定的自動思考も低減し、抑うつを低減する効果があることが明らかとなった。ただ、iCBTプログラムの利用率が不十分だったため、本年度改良する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
富士通の松本雅義執行役員のリーダーシップのもと、富士通研究所の熊野健志研究員が社内調整を進めてくださり、共同研究費と実験協力者を準備してくれ、また富士通の健康管理部門の産業医や臨床心理士との協力関係も調整してくれた。今回の研究協力者は、行政システム事業本部の新井伸介シニアマネージャーのもとにいるSEで研究協力を申し出てくださった98名であった。今回の「SEのためのCBTベースのeメール・カウンセリング・システム」に、SEのメンタルヘルスの維持向上効果があることはわかったものの、20名の養成した産業カウンセラーのうち若干名がSEの仕事の特徴が理解できず、うまくメール・カウンセリングできない場面が見受けられた点が問題であった。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況に書いたように、産業カウンセラーによっては、SEの仕事の内容を理解していないカウンセラーもおり、上手にメールカウンセリングができないという問題があった。そこで、本年度は富士通のOB・OGで産業カウンセラーの有資格者、もしくは富士通の現役社員で産業カウンセラーの有資格者をeメール・カウンセラーとして養成し、メンタリングシステムのように「SEのためのCBTベースのeメール・カウンセリング・システム」を運用する方が、効果が高いと考えられた。また、iCBTプログラムの内容を改善してより面白くすることと、新任管理職の悩みが強いことから「認知行動療法実践カード管理職編」の内容をiCBTプログラムに付け加えるという改善を行うこととした。そして、本年度は民需部門のシニアマネージャーである伊藤さんのご協力のもと、民需部門のSEの方々の実験協力のもと、再度実験群と統制群を用いた実験を行うこととした。
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