本年度の予定は、当初2018年度予定であったシングルアームの効果検証実験を実施することであった。実際には富士通研究所の実験協力を申し出てくださった研究員35名にブリテストを行い、産業カウンセラー8名と公認心理師のスーパーバイザー4名で、2019年9月30日~2019年12月13日まで実験を行った。プリテストに回答しても、eメールカウンセリングをほとんど受けなかった6名がおり、その6名はポストテストも回答してくれなかった。そのため、プリテストからeメールカウンセリング、ポストテストと、きちんと実験に参加してくれたのは29名であった。実験結果としては、プリテストからポストテストにかけて、BDIが11以上下がった人が1名、6~10下がった人が2名、1~5下がった人が9名いたものの、1~5増加した人が11名、6~10増加した人が1名、さらに15増加した人が1名いたため、プリテストとポストテストのt検定の結果は有意にはならなかった。ただ、カウンセリング経過についてのカウンセラーごとの分析から、カウンセリング当初の1~2週間にeメールを複数送ると、クライエントも返信するようになること、逆に当初の2週間に最初の日のeメール程度しかカウンセラーが送らないと、クライエントはeメールの返信をしなくなることが明らかとなった。 また、研究成果の社会への還元のための、日本産業カウンセラー協会の2019年6月の神奈川での全国大会において、第四分科会として「オンラインカウンセリング」と題した研究会を開催したところ、約300名の産業カウンセラーの参加があった。ディスカッションでは、LINEカウンセリングと異なった形での、労働者のメンタルヘルスの維持向上への期待がこのシステムに寄せられていることが明らかとなった。
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