インターネット依存が多い層として上位にあげられる大学生について,「インターネット使用をなかなか止められずにやるべきこと(課題や仕事など)が遂行できない(Cyberslacking)」ことへの予防策考案を念頭に,前年度まで、インターネット依存尺度と,「先延ばし傾向」および,学生の「ストレス対処」特に「回避的な」ストレス対処方略との関係について検討した。結果,推測通り「先延ばし傾向」、ストレスの「回避優先対処」方略に加えて,「情動優先対処」方略との関係性が示唆された。加えて,大学生が実際にどのような経緯でインターネットの過度な使用に至るのか,そのプロセスについてのインタビュー調査を行った結果,大学生になり自由な時間が増えることをきっかけに「使い過ぎ」に移行するなどいくつかの傾向が示された。以上から,インターネットの問題のある使用は,先延ばし傾向や問題から距離を置くストレス対処傾向などと関連があり,インターネットの使用が増えるのは「自由な時間が増える」大学生活以降であることが一因にあると推測された。 2022年度は1年生を対象として,入学直後,前学期末,後学期開始時,後学期末と複数回調査を実施し,入学当初からの変化を検討することで大学入学時から「インターネット依存」がどのように促進されるのか,学生生活に関わるどのような諸要因が関係するのか継時的変化を検討した。結果,継時的な大きな変化はみられず,インターネット依存傾向は年度末にかけて減少する傾向が示された。ただ,依存傾向は学科によって異なる特徴がみられることから各学科のカリキュラム(修学上の忙しさ等)の違いが関与すると推測された。一方でどの集団においてもインターネット依存傾向とストレス対処の「問題解決」方略傾向とは関係が低く,「問題回避」方略とは有意な関係が得られた。
|