研究実績の概要 |
本研究の目的は,認知症高齢者を介護する家族の負担感の軽減とQOLの拡大に対する「日本版ACT(Acceptance and Commitment Therapy)プログラム」の効果を検討することである。その効果検証は,「実証に基づくトリートメント」の開発の方法論に則り,事例研究,一事例の実験デザインによる研究,オープン試験(群間比較)というプロセスで行う。 本年度は,ACTプログラム(プロトタイプ)の実施とその評価をすることを目標とした。プロトタイプは,McCurry(2006)の家族介護者向けの支援プログラムである「DANCE」と呼ばれるトリートメント・モデルに,ACTの内容を組み入れて開発された。プログラムは,6-12回の個別の短期療法と3回(1ヵ月単位)のフォローアップで構成された。測度については,アウトカム測度として,1)Zarit 介護負担尺度日本語版の短縮版 (J-ZBI_8;荒井ら, 2003),2)GHQ 30精神健康調査票(中川・大坊, 1985),3)WHO-QOL26(田崎・中根, 1997)とした。研究参加者は,地域のフリーペーパーにて募集し,選定基準や同意が得られた介護者5名が,研究参加者として,当該ACTプログラムのプロトタイプに参加した。その結果,5名中3名に対して効果が見られた。5名の結果を統合した統計的分析の結果においても,中程度に有意な効果が見られた(p=0.0028, Tau-U=0.56 (95% CI[0.226, 0.901))。この結果は,Associtation for Contextual Behavioral Science の国際学会(カナダ,モントリオール)にて発表された。 さらに、家族介護者が援助提供施設に出向くことができない場合,遠隔ビデオ通話などのインフラを使用して、同一のプログラムの効果を検討した。また,BPSDそのものに対する介入支援方法の実施方法も,プロトコルにさらに付加させることも検討した。その結果、対面式の実施と同様の効果を得た。
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