厚生労働省(2015)は「認知症施策推進総合戦略-認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて-」(以下「新オレンジプラン」と呼ぶ)を策定した。そして,この新施策の「7つの柱」の中に,「認知症の人の介護者への支援」と「認知症の人やその家族の視点の重視」が挙げた。しかし,現時点で,家族の介護負担に対する軽減策や具体的サービスの開発がほとんどなされていない。さらに,このような開発の立ち後れによって,認知症介護うつや被介護者への虐待の拡大が危惧されている。 そこで,本研究の目的は,認知症高齢者を介護する家族の負担感の軽減とQOLの拡大に対する「日本版ACT(Acceptance and Commitment Therapy)に基づくプログラム」の効果を検討することであった。 当該プログラムは,McCurry(2006)の家族介護者向けの支援プログラムである「DANCE」と呼ばれるトリートメント・モデルにACTを組み入れて開発された。そのプログラムは,参加者間マルチベースラインデザインによって評価された。 その結果,統計的に中程度の有意な効果が認められた。その後,新型コロナウイルスのパンデミックが生じたため,当該プログラムをオンライン面接によって実施した。その結果,実際の対面面接と同等の効果が得られた。さらに,認知症の周辺症状(BPSD)や家族内の人間関係の問題にも対応するためのオプション的な手続きも,同時に検証された。その結果,当該プログラムの汎用性の拡大が認められた。ただし,新型コロナウイルスのパンデミックにより,当該プログラムをオープン試験や無作為化比較試験によって評価するところまでには至らなかった。今後は,そのような効果検証が必要である。
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