本研究の目的は、自閉スペクトラム症(ASD)を抱える子どもと養育者のためのアタッチメントに基づいた新しい支援方法を確立することである。そのために、アタッチメント理論に基づき開発された「安心感の輪子育てプログラム」(COSP)をASD児の母親を対象に実施し、非ランダム化対照比較デザインによってその有効性を検証した。COSPプログラムに参加した介入群には、①介入前、②COSPプログラム終了時、③COSPプログラム終了後6ヶ月、④COSPプログラム終了後1年後の各時期に、(a) 母親の精神安定度、(b)母親の養育効力感、(c)母親の視点における子どもの行動と情緒の問題についての質問紙調査、および聴き取り調査を実施した。統制群には介入群と同じ(a) (b) (c)の質問紙を用いて、①③④の各時期に質問紙調査を実施した。 令和4年度は、介入群と統制群のCOSPプログラム終了12ヶ月のデータの分析を完了することができた。また、COVID-19の影響により延期になっていた介入群への聴き取り調査をすべて完了することができ、事例検討による個別の具体的効果の検討に取り組むことができた。二群比較の分析結果については、COSPプログラム終了6ヶ月後までの調査結果に現れた介入効果が、COSPプログラム終了12ヶ月後においても持続することが確認できた。その結果を国内外の学会で発表した。
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