研究課題/領域番号 |
17K04474
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
坂口 幸弘 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (00368416)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 死別 / 悲嘆 / 遺族 / アセスメント |
研究実績の概要 |
今年度は、当該研究課題に関する文献レビューと、研究1「遺族のニーズやリスクを把握するためのアセスメント方法の検証」に関して、葬儀社が毎月開催しているサポートグループへの参加遺族のリスクアセスメントと、当該遺族を対象とした質問紙調査を実施した。参加遺族のリスクアセスメントは、サポートグループの運営スタッフによって、Bereavement Risk Assessment Tool(BRAT)の日本語訳版を用いて、2015年7月より毎月実施されている。2017年3月時点までで、延べ217名のアセスメントが行われた。今年度は遺族のアセスメントを継続するとともに、それに加えて、参加遺族204名を対象とした郵送による自記式質問紙調査を行った。その結果、109名から回答が得られた。回答者の性別は、男性32名、女性77名、年齢は40~87歳で平均69.5歳であった。故人との続柄は、配偶者が86名、子が14名、親が7名、その他が2名であった。死別からの経過期間は2~120カ月で、平均39.8カ月であった。簡易版複雑性悲嘆質問票BGQによる評定の結果、回答者の15%に複雑性悲嘆が疑われた。PHQ-9日本語版による評定では、回答者の19%にうつ病の疑いが示された。精神科医やカウンセラーの受診については、「死別前から受けていた」が7%、「死別後に初めて受けた」が18%、「受けたいと思ったことはあったが、受けなかった」が20%、「受けたいと思ったことはない」が49%であった。配偶者を亡くした人の将来の不安に関しては、「病気になった時、家族に負担をかけること」が81%と最も多かった。なお現時点では、BRATによる遺族のリスクアセスメントの評定データと、遺族調査のデータとの照合は完了しておらず、両者の関連性に関する分析によるアセスメントの妥当性の検証作業は次年度に実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は当該研究課題に関する文献レビューを進めるとともに、研究1「遺族のニーズやリスクを把握するためのアセスメント方法の検証」については、葬儀社の協力を得て、BRAT日本語訳版による遺族のリスクアセスメントは継続的に実施しており、遺族調査も実施することができた。しかし、リスクアセスメントの評定データと、遺族調査のデータとの照合作業までは完了しておらず、リスクアセスメントの妥当性の検証作業は未実施である。また、リスクアセスメントの運用方法については、支援者との意見交換は随時行っているものの、十分な検証までには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、今年度に引き続き文献レビューを進める一方で、研究1「遺族のニーズやリスクを把握するためのアセスメント方法の検証」に関して、今年度までに得られたデータを解析するとともに、支援者への聞き取り調査を実施し、BRAT日本語訳版による遺族のリスクアセスメントの信頼性や妥当性、ならびに運用方法に関する検討を行う。また、研究2「多層的な心理社会的支援の実施に向けての現状と課題の把握」に関して、文献レビューを踏まえたうえで、医療機関や葬儀社、自治体、セルフヘルプグループなどを対象とした調査を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の支出額が当初予定よりも大幅に少なかった主たる理由は、遺族調査において、調査協力者のご厚意で、調査に伴う印刷費や郵送費、謝金等の支出が、当初予算を大きく下回ったことや、他の研究費からも調査費用を支出したことが、大幅な残額が生じた主たる理由である。 次年度は、医療機関や葬儀社、自治体、セルフヘルプグループなどを対象とした調査を予定している。また必要に応じて、遺族のニーズに関する調査の実施も検討する。調査方法は質問紙調査もしくは面接調査とし、それに伴う印刷費及び郵送費、研究協力者や協力機関との研究打ち合わせ旅費、謝金等の支出を見込んでいる。加えて研究資料として、死別に関連する書籍等の購入費用が必要である。
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