東京オリンピック・パラリンピック大会は2021年に日本で開催される。これらの大きなイベントは,国際的な注目を集めていることから,国際テロ対策が必要となっている。本研究の目的は,模擬テロ攻撃シナリオ課題を使用して探索型隠匿情報検査(SCIT)の有効性について受動的パラダイムを用いて検討することであった。研究1は,これまでの標準的な3刺激オドボール課題を用いて,模擬攻撃テロシナリオ課題を読んで記憶してCIT検査を実施した。しかしながら,攻撃する都市名,標的,実行日3条件ともにprobe(テロに関係した探索すべき刺激)とirrelevant(無関係)刺激のP300振幅に有意差が認められなかった。そこで,研究2では模擬攻撃テロシナリオ課題を別室で実行した結果,同じシナリオでも有意差が認められ,80%の検出率が得られた。研究3では別室にいる実験協力者(サクラ)とシナリオを作成する工夫を行った結果,都市名,標的,実行日3条件ともにprobeに対するP300振幅が大きくなった。研究4では,国際テロを考慮して言語に依存しない顔写真で実験を行った。その結果,テロ実行犯として割り当てた顔写真(probe)でP300振幅が有意に大きくなった。研究5では,テロリストがCIT検査に対して妨害工作を行うことを考慮して,顔画像を呈示しながら身体的及び心理的カウンタメジャーを教示で実行させた。身体的カウンタメジャーは,刺激呈示とともにつま先に力を入れて妨害する方法であったが,probeとirrelevant刺激に有意差が認められた。但し,心理的カウンタメジャー群では有意差は認められなかった。今後,従来のP300振幅に加え,顔の既知顔と未知顔の弁別に有効な視覚刺激に対する視線を新たな指標として加え,複数指標による検出率向上に関する研究を進めていく。
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