最終年度は,コロナ禍で実施できなかった中間管理職対象の個別面接調査を実施した。ネット調査会社に登録しているモニターの中から,首都圏在住の中間管理職でメンタルヘルス不調を持つ部下のケアを経験したことのある方8名(男性6名,女性2名)を面接対象として抽出した。部下と関わる際に管理職として大事にしていることや,部下がメンタルヘルス不調を訴えてきた時の実際の対応,管理職として困難だったこと,およびその対処を中心に半構造化面接を行なった。現在得られた逐語記録を元に,「管理職のケア力」について解析中である。 また,ストレスチェック制度における集団分析の活用に注目し,個人と組織の関係をより的確に捉えるために,「組織の健康」モデルにおける組織要因(「ライフスタイルの尊重」「組織の将来性」「目標の共有」)がチーム要因である「心理的安全性」に影響を与え,「心理的安全性」が個人要因としてのストレス反応と職務満足感に影響を与えるというモデルを設定し,構造方程式モデリングを用いて検討した。その結果,組織要因としての「ライフスタイルの尊重」が「組織の将来性」および「目標の共有」に正の影響を与え,「組織の将来性」および「目標の共有」が「心理的安全性」に正の影響を与えること,「心理的安全性」は「疲労感」に負の影響を与えるが「憂うつ感」には統計的に有意な影響はみられないこと,「心理的安全性」は「職務満足感」に正の影響を与え,「職務満足感」は「憂うつ感」に負の影響を与えていることが確認された。このことから,組織的健康モデルに基づく集団分析が、組織の生産性を高め,心理的安全性を介して疲労感を低減させる可能性が考えられた。
|