研究実績の概要 |
1)1993年度から2018年度に臨床心理面接を実施したケースについて、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状を呈した被害者等を、健常者と発達障害者等(疑いを含む)に分類した結果、6ケース(地震、学校への不審者侵入、性被害、父親からの虐待、近隣者からの暴行、近所への落雷)が該当した。さらに、2019年度から2022年度にかけて4ケース(教師からの恫喝、面前DV、死の目撃、繰り返される酷いいじめ)であった。対人関係(対人距離)、対物関係(対物距離)は他の被害者よりも近く、PTSDの症状は長期化することが示唆された。犯罪被害者のケースでは、本研究期間(6年間)で56ケース中、7ケースが該当した。臨床心理査定においては、「体験距離」が近くなりやすく、トラウマ症状(PTSDの症状等)が増悪することが見いだされた。生育歴を詳細に聴取し、非定形発達にトラウマ症状が加わることを想定することが重要であることがわかった。 2)職場(動物園)で飼育していた猛獣により死亡したケースでは、職員に発達障害はみられなかったが、発達障害(被害なし)が疑われる職員による心の理論の欠如により、トラウマ症状に加え、カサンドラ症候群に陥るというケースがみられた。 3)2019年5月に、研究代表者・分担者による著書『臨床心理学-「生きる意味」の確立と心理支援-』を出版した。本書には発達障害やトラウマを被った事例等が多く含まれており、大学等で教科書として採用されている。 4)これまでの研究成果をもって、2020年3月に、ロンドン大学精神医学研究所(Institute of Psychiatry,Psychology & Neuroscience,King's College of London)等での学術交流を予定していたが、COVID-19の感染拡大に伴い、研究期間延長するも訪欧することができなかった。
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