研究課題/領域番号 |
17K04481
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研究機関 | 平安女学院大学短期大学部 |
研究代表者 |
清水 里美 平安女学院大学短期大学部, その他部局等, 教授 (80610526)
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研究分担者 |
加藤 隆 関西大学, 総合情報学部, 教授 (90268318)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 認知発達過程 / 「財布探し」課題 / 生涯発達 / 新版K式発達検査 / 不良定義問題 / 発達障害 / SRS-2対人応答性尺度 |
研究実績の概要 |
本研究は、①成人期から高齢期にかけての認知発達過程についての基礎資料を得る。②人の情報処理過程における問題空間の理解やプランニングおよびその表現に関して、一般妥当性のある反応を妨げる要因を検討し、支援教育に関わる知見を得る。③個々の検査項目が認知発達のどの側面を測っているのかについて、生涯発達の観点から明らかにし、検査項目のアカウンタビリティを高める、という3つの目的に基いて計画されている。 本年度は、①本調査の不足データの補充、②収集データの点検、整理、入力、③探索的な分析の開始、④成果の学会発表と論文執筆、をおこなった。①から④についての具体的な内容は以下の通りである。①2018年度に約300のデータ収集をおこなったが、さらに詳細な分析をおこなうため、京都国際社会福祉センターと協力して大学生データを追加した。大学生の一部については日本文化科学社の協力のもと、WAIS-Ⅲを間をあけて実施した。また、20代半ば以降の成人データについて教育歴の不均衡を是正するために、可能な限り補充し、研究全体で321名のデータを収集した。②前年度に引き続き、データの点検と入力をおこなった。③「財布探し」課題の遂行後の言語反応について分析方法を検討し、反応内容の分類を試みた。さらに、言語反応とSRS-2の結果との関連について探索的な分析を開始した。 ④2017年度および2018年度の学会発表の内容をもとに論文を作成した。また、本研究の結果を含めて「発達検査課題の認知的要因の分析-他者認識の観点から-」というタイトルで博士論文をまとめた。発達検査課題で提示される「他者」は明示度により三水準あり、それぞれの水準の処理に認知発達が関与していることを示した。さらに、本研究で新たに考案した課題と既存の課題について、20代から50代までの通過率の年代差および性差について検討し、学会発表をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していたデータ収集は終了し、不備があったデータの確認補充も可能な限り行った。言語データ以外の分析については進み、成果の公表もおこなってきた。一方で、2月より作業を予定していた補充分の言語データの再点検が新型コロナウィルスの感染拡大防止の影響もあり、滞っている。また、本研究結果の詳細な分析のため、今年度より研究グループに参加し、着手予定であったSRS-2成人版の標準化作業についても、新型コロナウィルス問題の影響により、中断している。7月以降の情勢により、分析内容を再検討する予定であるが、これらの理由から「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
全体のデータ分析と論文作成および報告書の作成をおこなう。成果はホームページ上でも公開する予定である。 SRS-2対人応答性尺度については、本研究で収集したデータをもとに、不足分を補充することで、成人版の標準化を進めることをめざしている。発達障害者支援の領域では有用なアセスメントツールの開発整備が求められているため、成人版が完成することは社会的にも有用であると考えられる。 さらに、新版K式発達検査2020年版も今年度中に公刊予定である。成人級の項目や換算表は本研究で収集したデータが基になっている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年末にSRS-2の成人版標準化実施が計画されたことから、本研究のデータ分析もその結果に連動させるよう計画変更し、SRS-2成人版標準化後にデータ解析作業がおこなえるようにした。そのため、データ解析作業に伴う人件費および物品費と学会発表の旅費を残している。
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