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2020 年度 実施状況報告書

認知発達検査における一般妥当性のある反応を妨げる要因-生涯発達の観点からの検討-

研究課題

研究課題/領域番号 17K04481
研究機関平安女学院大学短期大学部

研究代表者

清水 里美  平安女学院大学短期大学部, その他部局等, 教授 (80610526)

研究分担者 加藤 隆  関西大学, 総合情報学部, 教授 (90268318)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2022-03-31
キーワード認知発達過程 / 「財布探し」課題 / 加齢に伴う発達的変化 / 新版K式発達検査2020 / 発達障害 / SRS-2対人応答性尺度
研究実績の概要

2020年度は、新版K式発達検査2001の成人版の改訂に関わる基礎資料の分析をおこない、改訂版である2020年版を作成した。本研究では、これまでの期間に、2001年版の臨床的活用において医療福祉現場から寄せられていた課題を整理し、2001年版の検査項目に新たに考案した新設項目を含めて成人データの収集をおこなっていた。2020年度は、0歳児から80歳までの3243名のデータについて、項目ごとの通過率、年齢区分ごとの得点を調べ、換算表の作成や加齢に伴う補正の仕方について検討をおこなった。また、判定基準の明確化もおこなった。これらの結果をもとに、新版K式発達検査2020の手引書および解説書を発行した。
財布探し課題の問題解決に関する研究の一貫として、財布探し課題の成績とSRS-2対人応答性尺度の「社会的コミュニケーションと対人的相互交流(SCI)」の自己評定および他者評定の結果を比較検討した。SCIは,社会的気づき,社会的認知,社会的コミュニケーション,および社会的動機づけに関する尺度である。25-39歳までの前期成人期群71名,40-54歳までの壮年期群79名、計150名の結果を分析し、有意差はみられなかったものの、財布探し課題の不通過者では自己評定と他者評定の一致率が低い傾向や他者評定で基準値以上が多い傾向,Ⅱ通過者は自己評定で基準値以上が多い傾向が伺え、日本LD学会で発表した。
成人期から高齢期にかけての認知発達過程を明らかにするために、新版K式発達検査2020年版用に収集した12歳超から80歳未満までの1043名のデータをもとに、加齢に伴う検査成績の低下がどの年齢区分から生じるかを検討した。結果として、30歳頃から低下が生じ、60代以降ではとくに顕著であることを見出し、日本発達心理学会で発表した。
本研究での成果に基づく博士論文の内容を加筆修正し、研究書を発行した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究で収集した成人のデータを含めて標準化された「新版K式発達検査2020」が完成し、手引書および解説書が刊行された。新版K式発達検査は就学前の子どもの発達を観る検査として広く臨床現場で普及しているが、今日の発達障害概念の広がりにより、療育手帳の判定に関わって、就学後や成人期以降にも用いられることがある。そのため、2001年版で不十分であった成人期以降のデータを加えた再標準化が求められていた。本研究により、20歳以降80歳まで、教育歴を統制し、全国からデータを収集し、成人期の発達診断としても活用可能な検査として改訂できた。
また、本研究で成人に適用した検査項目の分析から、加齢に伴って成績が下がる項目と加齢の影響をあまり受けない項目がみられることも明らかとなった。この知見は、生涯発達の観点から発達検査をどのように活用するべきかについての資料として活用できると考えられる。
さらに、新版K式発達検査の中で、以前より臨床的解釈が困難であった財布探し課題について、成人年齢の反応を収集分析した結果を踏まえ、判定基準を整理することができた。
日本文化科学社の協力を得て収集した成人(20代から70代まで)のSRS-2(日本版対人応答性尺度、自己評価および他者評価)約300例については、新型コロナウィルス感染拡大状況の影響で、成人版の標準化に至らなかったが、今後の作業の基礎資料として活用できると考えられる。
以上、本研究でのこれまでの成果として、成人期以降の発達的変化や発達障害者の認知的要因の分析のための基礎資料が提供でき、当初の計画が概ね達成できた。

今後の研究の推進方策

財布探し課題の周回数と言語プロトコルの関連について分析、および時計描写テストの発達的変化について分析と研究期間全体の報告書をまとめる予定である。
SRS-2の成人版標準化作業が再開できれば、そちらも進めていきたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

本研究で収集したSRS-2対人応答性尺度のデータ分析をより精密におこなうために、2019年に日本文化科学社より要請があったSRS-2対人応答性尺度成人版標準化作業チームに参加することにし、2020年度の継続申請した。ところが、新型コロナウィルス感染拡大に伴う緊急事態宣言のため、2019年度末に予定されていた研究会が延期となり、2020年度中も再開できない事態となった。そのため、分析補助の人件費や報告書の印刷費が使用できなかった。
助成金の残りは、SRS-2について研究再開のめどが立てば、その活動費にあてる予定である。再開困難な場合は、すでに収集したデータについて現時点で最善の解析を検討し、報告書にまとめる。その場合は、助成金の残りをデータ解析補助の人件費と報告書の印刷費として使用する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] 発達検査課題における他者認識の評価に関する考察2020

    • 著者名/発表者名
      清水里美・加藤隆
    • 雑誌名

      平安女学院大学研究年報

      巻: 21ーⅠ ページ: 45-51

    • DOI

      10.20601/00002427

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 心理検査を活用したアセスメント 新版K式発達検査2020

    • 著者名/発表者名
      清水里美
    • 雑誌名

      LD・ADHD & ASD

      巻: 22 ページ: 48-51

  • [学会発表] 現代の成人の発達に関する検討(1) 新版K式発達検査2020年版標準化資料の分析から2021

    • 著者名/発表者名
      清水里美・大谷多加志・原口喜充・田中駿・郷間英世
    • 学会等名
      日本発達心理学会第32回大会
  • [学会発表] 現代の成人の発達に関する検討(2)言語・社会領域における検査結果の年代比較から2021

    • 著者名/発表者名
      大谷多加志・清水里美・原口喜充・田中駿・郷間英世
    • 学会等名
      日本発達心理学会第32回大会
  • [学会発表] 性差を考慮した「幼児版社会性・行動評価尺度」の開発 「指示理解」の適用年齢の検討2021

    • 著者名/発表者名
      田中駿・牛山道雄・清水里美・大谷多加志・大久保圭子・郷間英世・石倉健二
    • 学会等名
      日本発達心理学会第32回大会
  • [学会発表] 保育現場における発達支援の課題と展望 ―保育コンサルテーションにおける相談内容の分析から―2020

    • 著者名/発表者名
      清水里美
    • 学会等名
      日本保育学会第73回大会
  • [学会発表] 財布探し課題の臨床的解釈の検討ーSRS-2対人応答性尺度との関連ー2020

    • 著者名/発表者名
      清水里美
    • 学会等名
      日本LD学会第29回大会
  • [図書] 発達検査課題の認知的要因の分析ー他者認識の観点からー2021

    • 著者名/発表者名
      清水里美
    • 総ページ数
      128ページ
    • 出版者
      風間書房
    • ISBN
      978-4-7599-2376-6
  • [図書] 新版K式発達検査2020解説書(理論と解釈)2020

    • 著者名/発表者名
      新版K式発達検査研究会(編)・郷間英世(監修)・清水里美(著者代表)
    • 総ページ数
      148ページ
    • 出版者
      京都国際社会福祉センター
  • [図書] 新版K式発達検査2020実施手引書2020

    • 著者名/発表者名
      新版K式発達検査研究会(編)・郷間英世(監修)・清水里美(著者代表)
    • 総ページ数
      209ページ
    • 出版者
      京都国際社会福祉センター

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公開日: 2021-12-27  

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