研究課題/領域番号 |
17K04484
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
小久保 奈緒美 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, その他, 研究員 (40392451)
|
研究分担者 |
吉本 定伸 東京工業高等専門学校, 情報工学科, 教授 (00321406)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 認知機能検査 / 認知トレーニング / 認知症予防 / アプリケーション / 遠隔診療 / ヘルスケア / 認知行動療法 / 非接触バイタルセンシング |
研究実績の概要 |
本研究課題では、平成29年度、申請者らが新たに開発した認知機能評価・トレーニング用アプリケーション、User eXperience-Trail Making Test(UX-TMT)の信頼性・妥当性の検討を行った。 本研究の参加者は、非臨床(健常成人、HC)群29名、パーキンソン病患者(PD)群28名、軽度認知障害と認知症患者(MCI&D)群27名の計84名であった。 本研究では、全参加者(n=84)の97.6%がUX-TMT認知症スクリーニング検査の課題すべてを遂行でき、解析対象とした81名の検査平均所要時間はHC群428.8(±109.1)秒、PD群542.0(±168.7)秒、MCI&D群777.5(±256.1)秒であった。MCI&D群は、HC群と比較して有意に認知機能検査得点が低く、UX-TMT検査所要時間が長かった。UX-TMT認知症スクリーニング検査得点についてMCI&D群とHC群を対象にROC解析を行った結果(n=53)、カットオフ得点=21で高い感度(.83)と特異度(.92)を示し、得点に年齢を加えると感度(.96)と特異度(.92)はより高くなった(Figure 1)。さらに、UX-TMT認知症スクリーニング検査はMMSE-Jと高い相関(r = .77)を示し、クロンバックのα係数(.71-.83)は中程度の内的一貫性を示した。 また、認知機能トレーニング課題を拡充し、認知機能や身体機能に併せた難易度設定を行った。同時に、認知症を予防するための新たな遠隔医療・ヘルスケアプログラムを補助するための、タブレット内蔵カメラを利用した非接触バイタルセンシング技術の開発と実装を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者らは現在、2015年に発表したUser eXperience-Trail Making Test(UX-TMT)を発展させ、認知症を予防する新たな遠隔医療・医師-患者間プログラム(information technology assisted Cognitive Assessment and Neurobehavioral enhancement program for dementia: i-CAN)で応用するための認知機能評価・トレーニング用アプリケーション(i-CANアプリ)を開発している。 H29年度の研究において、UX-TMT認知症スクリーニング検査は、疾患のある高齢者でも従来検査と同等の短い時間と被検者自身による簡単な操作によって遂行可能であった。また、従来検査法と同等に判別性能も高く、日本人対象の認知症スクリーニング検査として高い有用性と信頼性、妥当性を示した。H29年度の研究では、被験者間の年齢マッチング等いくつかの課題が明確になったものの、今後の疫学・臨床研究において主たる、或いは補助的検査として有用なツールとなることが期待される。 また、筆者らはH29年度中に認知機能トレーニング機能と非接触バイタルセンシング機能の開発にも着手し、現在有効性の検討と改良を行っている。このため、本研究課題の現在までの進捗状況としては、概ね順調に進捗していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では今後、認知機能評価・トレーニング用アプリケーションの使用感調査を実施し、より信頼性・妥当性が高く、有用性の高いアプリケーションを開発する。また、本研究では現在、認知機能評価・トレーニング用アプリケーションへ応用するためのタブレット内蔵カメラを利用した非接触バイタルセンシング機能を開発し、実装を進めている。今後は、認知症を予防する新たな遠隔診療・ヘルスケアプログラムの開発と応用のため、各機能の統合を進める。 今後の研究の推進方策として、認知機能評価・トレーニングアプリケーションの使用感調査とフィードバックをもとに開発を効率化すると同時に、アプリケーションを活用した認知症予防プログラムの実施可能性と有効性を高めていく。また、アプリケーション開発と並行して認知症予防のための認知行動療法プログラム開発を進め、研究開発全体の推進を図る。 なお、今後は多施設の研究者がより密に連携を取り効率的に研究開発を進められるよう、プロジェクトマネージメント手法を取り入れて進捗確認と計画の修正、開発と応用を進めて行く。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究計画のうち、プログラム開発ならびに研究推進のための海外渡航計画が延期になったため。 本年度中にプログラム開発ならびに研究推進のための海外渡航計画を更新し、実施する。また、国内での共同研究計画の一部が遅れているため、本年度中に計画を開始、推進する。
|