研究課題
本研究では,運動知覚成立時の脳磁図(MEG)を取得し,空間視・物体視という両経路の賦活とその情報の統合について多感覚的に検討した。2019年度では,運動知覚関連情報が前頭部,側頭部へと伝達される一方,立体視関連情報は後頭部に留まる,という2018年度までの研究結果をさらに検討するため,聴覚刺激による運動感の有無,さらには視覚刺激と聴覚刺激とを組み合わせた条件を追加して実験を行った。11名の実験参加者に対して,視覚条件では,黒色背景に持続時間66.8 msの白色円刺激を,中央凝視点から左右水平5°離れた位置にTVモニター上に提示した。聴覚条件では,視覚刺激とほぼ同位置に置かれたスピーカーから,白色ノイズ(77.4 dB)を,視覚刺激と同様な持続時間で提示した。これまでと同様,空間的に異なる2つの位置に継時的に刺激を提示すると最適な運動感が得られる最適条件と,2刺激が同時に提示される同時条件とを設定した。さらに,視聴覚複合条件では,視覚,聴覚刺激が同じ位置から提示される一致条件と,異なる位置から提示される不一致条件とを設定した。その結果,視覚条件の場合は,最適条件の賦活量が上・下後頭回において約220-300 msの潜時帯で増大していたが,聴覚条件では明確な所見が得られなかった。一方,視聴覚複合事態では,下側頭回,中側頭回右側,上側頭回右側といった側頭部における,運動感依存というよりも視聴覚刺激の不一致感による増大した賦活化が,60-120 ms,290-370 ms,300-430 msなどの潜時帯で認められた。以上のことから,視覚刺激の賦活が後頭部で認められたこと,また聴覚刺激では運動感を伴う賦活化が明確には示されなかったこと,さらに,視聴覚複合刺激では,視覚刺激の影響と,視聴覚複合提示における空間的位置の「不一致感」が脳活動に影響を及ぼしうることが示唆された。
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信州大学人文科学論集
巻: 7 ページ: 125-133
Frontiers in Psychology
巻: - ページ: -
10.3389/fpsyg.2019.01248