本研究では,さまざまな認知課題のパフォーマンスを向上させることが明らかとなっている動機づけの中でも二次的報酬にあたる金銭的報酬の効果に焦点を当て,動機づけを高めることによって,顔画像による個人識別の正確性がそもそも改善されうるのか,また,改善されるとすれば,そのプロセスやメカニズムはどのようなものかを明らかにすることを目的とする.実験の結果,課題全体の成績水準が高く,識別の正確性においては金銭的報酬の効果は示されなかったものの,反応時間においては報酬の効果が示された.つまり,異なる人物が提示される試行においては,報酬の存在は,実験参加者に,より慎重な判断を促す可能性が示唆された.
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