研究実績の概要 |
最終年度は,オノマトペを用いて,布の肌触りを表現するオノマトペと高級感の関係の検討した.布の肌触りを表現するオノマトペ(擬態語)のデータと,高級感・安っぽさの評定データを合わせて分析し,布の高級感と,布の肌触りを表現する音韻との関係性について分析した.布が高級と感じられるほど,肌触りを表現するオノマトペにおいて,第一子音の/s/,/t/,/h/,/m/, 第一母音の/u/が増加することが明らかにされた.また,高級感に関係するオノマトペの音韻は,滑らかさ,厚さ,伸縮性を表現しており,それにより高級感と関係しているということを示唆する結果が得られた. さらに,乳児の泣き声をオノマトペ(擬音語)で表現する実験を行い,その結果から,乳児の泣き声の判断次元を抽出し,乳児の泣き声の分類を行った.「えへっ」「あへっ」「あはっ」という表現を含む次元,「ぎゃーん」「おんぎゃー」などで表現される次元,「うえー」「へへーん」などで表される次元などの泣き声次元を抽出した. 研究全体で,日本語オノマトペにより,食感の次元,痛みの次元,布の肌触りの次元,乳児の泣き声の次元,表情の次元を抽出し,味覚に関係する食感の次元,痛覚,触覚,聴覚の知覚次元,及び,感情次元を推定した.よって,嗅覚を除いた代表的感覚モダリティにおける知覚次元と,心理状態を表す感情次元をオノマトペ表現により推定することができた.さらに,オノマトペにおける食感の音象徴と触覚の音象徴とを比較することにより,異なる知覚次元における音象徴の統合的分析を行い,オノマトペにおける音象徴の感覚モダリティ間の共通性と相違を明らかにした.
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