研究課題/領域番号 |
17K04501
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研究機関 | 目白大学 |
研究代表者 |
時田 みどり 目白大学, 保健医療学部, 教授 (40571112)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 要約統計量 / 平均値抽出 / 多感覚 |
研究実績の概要 |
以下3件の実験研究を行なった. 1.理想的観察者分析を適用した平均値推定と分散識別の関連性の検討:対象刺激群の大きさの平均値の相異は,それらの分散の識別にどのような影響を及ぼすかを検討した.さらに,理想的観察者分析を用いて,バラツキ認知過程に平均値推定過程が含まれるか否かを検討した.結果から,平均値が等しいときに,1)バラツキ識別の精度が僅かに高いこと,2)バラツキ認知過程には,平均値推定は含まれないこと,が示唆された. 2.平均値推定の学習効果が,分散識別精度に及ぼす効果の検討:異なる要約統計量(平均と分散)において,共通メカニズムが存在するか否かを検討した.実験では,方位刺激を用い,事前・事後テストを行って,平均値推定の学習効果がどのようにバラツキ識別に影響するかを検証した.学習段階において,平均値推定及び方位比較課題ともに,パフォーマンスが上昇した.分散識別課題において,統制群と学習群とともに,学習によってパフォーマンスが僅かに上昇した.これらの結果から,分散識別課題でのパフォーマンスの上昇は,平均値推定の学習効果に影響を及ぼしたとは言えなかった.すなわち,平均値推定と分散識別が共通の処理過程を媒介する可能性は支持されないことが示された. 3.把握動作の調整・維持・産出における心理物理的特性の検討:把握力調整能力測定機器iWakkaを用いて,1)調整,維持,および再生のそれぞれの過程の精度の測定,2)マグニチュード産出におけるベキ指数の推定及びその個人差の検証を行った.結果から,調整・維持・10秒後再生において,ターゲット出力と顕著な差は見られなかった。ただし,再生時は,調整・維持出力と比較して,過大出力傾向,または,過小出力傾向を示す参加者がみられた.マグニチュード産出では,予測される出力よりもかなり小さな値が出力された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
聴覚・触覚の平均値推定についての実験研究を行う予定であったが、視覚刺激を用いた実験が主になり,聴覚・触覚での実験研究に至らなかった.理由としては、触覚に用いる機材の選定に,予想以上の時間を要していることが挙げられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,前期に,触覚刺激提示装置を設置し,触覚の平均値課題を中心とした実験研究を進める.装置の設置完了後は,当初の結果にそって,次のような実験研究を推進する.研究1. 各感覚モダリティにおける平均量推定精度の検討では,視・聴・触覚の三条件で,可能な限り刺激提示条件を一貫させ,平均感覚量の推定精度を比較する.まず,新たな試みとなる触覚での実験手続きを構築し,次に,これに準じた方法で,聴覚・視覚条件での実験を行う.測定方法は,心理物理学的測定法を用いた識別実験と,理想的観察者分析を用いたモデル検証である.研究2.各モダリティの平均量推定における情報処理モデルの構築では,複数の情報を統合してその平均量を抽出する過程において,1)ヒトが求めている代表値は何か,2)系列位置によって情報の重み付けはどのように異なるか,3)刺激数の違いはどのような効果を示すか,の3つの問題に関し,行動実験とモデルの検証を行う. 平成31年度は,研究3.視・聴・触覚で共通のSSRメカニズムについてより詳細に検討する.具体的には,研究1の結果を踏まえて平均量推定の簡易測定方法を考案し,多数の観察者を対象として,以下の3つの実験研究を進める.3-1では, 各感覚モダリティの平均量推定精度と他の認知機能(記憶・注意等)との関連性を検討する.3-2では, モダリティ間の成績の相関関係について検討を行う.3-3では, 異なる提示刺激間での学習効果の転移を検討する計画である.研究4では,実験研究1,2,3の結果を踏まえて,視・聴・触覚で共有される要約統計量表象モデルを構築する.さらに,各モデルの下でシミュレーションを行い,行動実験の結果と比較し,モデルの妥当性を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度中に、触覚刺激提示機材を購入する予定であったが、触覚刺激の選定に時間を要し,機材の購入にいたらなかった.また、触覚刺激を用いた実験が遅れているため、その参加者等に支払う謝礼等が発生しなかった.平成30年度は,前期のうちに触覚刺激提示装置の選定及び購入を行い,予備実験を開始する計画である. その他,以下の使用を計画している.1)デスクトップパソコン、実験用ノートパソコン、プログラム作成用アプリケーション・デスクトップパソコン1台の購入を予定している.2)研究協力者、実験補助要員への謝金及び実験参加者への謝礼:実験プログラムの作成・データ分析に携わる研究協力者のへの謝金や,実験実施に携わる実験補助要員への支払いを予定している.3)結果公表を目的とした国際学会への参加旅費等:Psychonomic Society, Cognitive Science Society等の海外の学会での発表を予定している.4)結果公表を目的としたオープンアクセスジャーナルへの投稿:英文雑誌へのオープンアクセスジャーナルへの論文掲載を予定している.
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