研究課題/領域番号 |
17K04507
|
研究機関 | 相模女子大学 |
研究代表者 |
後藤 和宏 相模女子大学, 人間社会学部, 准教授 (20546725)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | げっ歯類 / メタ認知 |
研究実績の概要 |
動物が、自分の知識の状態をモニタリングし、その知識に関する確信度にもとづき、どのように行動を調整するかを調べるためには、まず難易度が調整できる弁別課題がなければならない。初年度の研究では、マウスを実験対象の動物種として、1種類のパラメーター操作によって難易度が調整できる弁別課題を作成した。 まず、パラメーター操作が容易な視覚刺激を用いた課題を作成しながら、弁別手続きの確立を目標とした。2つの画像をタッチモニターに呈示し、標的刺激を選択すると餌が与えられた。マウスのようなげっ歯類では、課題難易度が高い場合、特定の選択肢のみを選択するようになる反応バイアスが生じてしまうため、その反応バイアスが生じにくくさせる矯正手続きを導入する必要がある。いくつかの矯正手続きを試した結果、長期間の弁別訓練でも効果的な矯正手続きを見つけることができた。 さらに、操作が容易な線分の傾きを用いた弁別課題では、最も弁別難易度が低いはずの水平、垂直の弁別ですら、かなりの訓練日数が必要だった。刺激の大きさや明るさのほうが弁別難易度が低いと思われたため、円の大きさを弁別する課題にしたところ、2つの円の大きさの差が小さくなるほど正答率が低下し、弁別難易度が上がる結果となった。また、同一の大きさの円の明るさを白から黒の間で段階的に変化させたところ、2つの円の明るさの差が小さくなるほど正答率が低下し、弁別難易度が上がる結果となった。それに加え、運動刺激など、さらにいくつかの段階的な難易度調整が可能な弁別課題の作成を継続しているところである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タッチモニターをそなえたスキナー箱で難易度調整が容易な複数の視覚弁別課題を作成できたため、初年度の目標としては十分に達成できたと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
次の課題は、すでに作成した段階的な難易度調整が可能な弁別課題に、情報希求手続きを導入することである。情報希求手続きとは、課題が難しいときに、動物がある反応をすることで、課題の難易度を下げることを可能にするものである。課題の難易度を下げるための反応は、それ自体がコストとなるが、課題に不正解すると餌がもらえなくなってしまうコストよりも、追加反応のコストが小さいときには行動調整が生じると考えられる。さらに、1つの課題で行動調整が見られた場合、それが別の課題にも般化するか検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
マウスの訓練では、餌を報酬として用いているので、より小さな餌を報酬として用いる給餌器があれば、訓練をより効率的に行うことができる。学会での情報収集で、そのような給餌器が予算内で購入可能だということが明らかになったので、その給餌器を導入するほうがよいと判断したため、次年度の予算を前倒しして使用することにした。
|