研究実績の概要 |
研究最終年度に当たる本年度は、1)注意操作を行った聴覚刺激を用いた、聴覚性驚愕反応およびそのプレパルス抑制についての検討を行い、また並行して、2)簡易型聴覚性驚愕反応測定装置の開発を行った。 1)注意操作については、初年度に実施した古典的条件付け法を利用した。また、聴覚性驚愕反応およびそのプレパルス抑制については、平成30年度に構築したシステムを利用した。条件付け獲得後、聴覚性驚愕反応測定を行ったが、驚愕反応およびプレパルス抑制に顕著な変化は認められなかった。条件刺激の強度と背景ノイズ強度が近かったため、条件付けの効果が反映されにくかった、あるいは急速に消去されたことが原因と考えられる。条件刺激強度を上げると驚愕反応強度が上昇したが、これはショック誘導性の驚愕反応増強効果と言える(Grillonら,1991)。また、上記の条件刺激に対する消去操作、および条件刺激に対する潜在抑制操作後の驚愕反応およびプレパルス抑制にも顕著な変化は認められなかった。これらの結果は、一連の実験操作の文脈が聴覚性驚愕反応に強く影響し得ることを示唆するものであり、聴覚刺激のみならず、実験参加依頼から始まる一連の実験操作文脈および実験環境に対する認知バイアスの変化の影響を詳細に検討する必要がある(詳細は文献1を参照)。 2)人における聴覚性驚愕反応の研究は、これまで主として医療機器レベルの専用の装置を利用して研究が行われてきた。簡易的な装置の利用が可能となれば、大規模な実験施設を持たない大学等でも、聴覚性驚愕反応の測定が可能になる。そこで、市販のウエアラブルデバイスを用いて、移動可能な簡易的驚愕反応測定システムを考案し(詳細は文献2を参照)、聴覚性驚愕反応およびそのプレパルス抑制の測定が可能であることを示した。また、複数の環境(実験場所)で測定を行い、測定場所が変わってもほぼ同様の結果が得られることを確認した。
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