研究課題/領域番号 |
17K04509
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研究機関 | 京都橘大学 |
研究代表者 |
坂本 敏郎 京都橘大学, 健康科学部, 教授 (40321765)
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研究分担者 |
崎田 正博 京都橘大学, 健康科学部, 教授 (10582190)
上北 朋子 京都橘大学, 健康科学部, 教授 (90435628)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 社会的隔離 / 社会的認知機能 / 前頭前皮質 / オキシトシン / マウス |
研究実績の概要 |
今年度の研究では、マウスの前頭前皮質が社会的認知機能(他個体の弁別・記憶)に果たす役割を検討した。研究1では、マウスの前部帯状皮質(ACC: anterior cingulate cortex)もしくは内側前頭前野( mPFC: medial prefrontal cortex)に、その部位の活性を抑制するGABAA受容体アゴニスト(ムシモル)を投与して、馴化・脱馴化法に基づく社会的認知テストを実施した。結果、ACCにムシモルを投与したマウスは他個体へ馴化に障害を示し、mPFCにムシモルを投与したマウスは他個体への探索量が増加する傾向を示した。これらの結果は、マウスの前頭前皮質が社会的な記憶や動機づけに関与する可能性を示唆する。研究2では、イボテン酸を投与してマウスのmPFCを損傷し、長期の社会的記憶(他個体弁別)に果たすmPFCの役割を検討した。mPFCが長期の馴化に関与する結果が得られており、研究を継続している。 研究期間全体の成果として、離乳後から6週間の隔離ストレスを受けたマウスは社会行動(他個体への接近行動)に障害を受けることが示された。6週間の隔離ストレスを受けたマウスに、オキシトシンの急性投与やフルオキセチンの慢性投与を実施したが、社会行動は改善されなかった。これらの薬物の投与量と時期を考慮すること、豊かな環境で飼育して社会行動の改善効果を検討することは、今後の課題である。オキシトシンの投与が思春期マウスの社会情動性に与える影響を検討した研究では、高濃度の腹腔内投与は社会行動に悪影響を及ぼすこと、脳内投与では社会行動を促進することが明らかになった。また、マウスの前頭前皮質が社会的認知機能に果たす役割についても上述した興味深い結果が得られている。これらの研究成果を礎にして、今後も適切な社会行動の生起メカニズムを支える脳内機構の解明を目指していきたい。
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