本研究は、人間が自己の記憶能力や記憶特性、知識状態をどのように認識し、それに基づいて記憶活動をいかに展開していくのかを、個人の自己認知と状況認知に関連づけて明らかにすることである。メタ記憶(記憶に関するモニタリングとコントロール)と自己認知・状況認知との関係に焦点を絞り、認知心理学的方法を用いて研究を進めた。大学生100名程度を対象に、個人ごとに(1)代表的な記憶実験と標準化された記憶検査による実験室場面での記憶能力とメタ記憶の測定、(2)質問紙調査による日常生活場面での記憶行動傾向とメタ記憶信念の把握、(3)質問紙調査と面接調査による自己認知と状況認知の同定、の3点に関する基礎的データを収集した。2022年度は、次の3つの研究活動を行った。 1.実験・検査・調査の実施:主要な先行研究文献を入手し、これまでの重要な研究知見を整理するとともに、前年度までに実施した実験的研究の結果をもとに追加的にデータ収集を行った。具体的には新たに、大学生26名に対して個別的に同一条件のもとで記憶実験・記憶検査・記憶調査を実施した。 2.実験・検査・調査のデータ分析:実験・検査・調査によって得られたデータを整理し、分析を行った。 3.既有の実験調査データの公表(論文化):本研究テーマに関連してすでに収集した実験調査データの整理・分析を行うとともに、関連事項の論考を含め、研究書の分担執筆、論文作成及び学会発表を行った。 以上のように、2017年度から始まった本研究計画において最終2022年度までの6年間に、当初計画よりも多くの実験データ(160名分の個別データ)を収集することができた。
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