連続的な音のつながりを持つ音声から100~200ms 程度の間隔ごとに音を抜き取るとその内容の理解が極めて困難になる。しかし、その抜き去られた音のかわりに広帯域の雑音を挿入すると元の音声を滑らかに知覚することができる。この断続的な音声が雑音の存在により元の音声に修復されたように聞こえる補完現象は音素修復と呼ばれている。 本研究では高度なコミュニケーション能力を持ち、聴覚野を含む大部分の皮質領域が脳表面に露出している小型霊長類マーモセットを用いて音素修復に関わる大脳皮質の神経ネットワークを同定し、その包括的な神経メカニズムを明らかにすることを目的とする。 昨年度までの研究において脳表面に露出した聴覚皮質に神経活動依存的に蛍光を発するタンパク質をウイルスベクターを用いて導入したマーモセットを専用のチェアーに座らせ覚醒下で1光子カルシウムイメージンを行い音の周波数に反応する領域を同定し、聴覚皮質のコア領域、ベルト領域、パラベルト領域における音素修復刺激に特異的に反応する領域の同定を行った。その結果、聴覚野の各サブ領域のにおいては音素修復刺激に選択的に反応する領域は見出されなかった。これまで用いた音素修復刺激は純音をもとにしたものであったため音素修復に対する特異的な反応が弱かったことが考えられたため本年度は実際の環境において出現する鳴き声や生活音等の自然刺激を元にした音素修復刺激を作成し計測を行った。その結果、音素修復刺激に選択的に反応する領域が見いだされた。
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