2020年度は、戦前戦後期の女性のキャリアパスにおける大学院進学の位置付けを考察する一環として、1950~60年代に主に新設された新制女子大学大学院の文系研究科(修士課程)12校(私立女子大学10校〔聖心女子・津田塾・神戸女学院・日本女子・実践女子・京都女子・共立女子・同志社女子・金城学院・東京女子大学〕、国立女子大学2校〔お茶の水女子大学・奈良女子大学〕)を対象として、「設置認可申請書」・「設置計画書」(国立公文書館所蔵)に着目し、大学院の専任教員予定者における女性の配置・経歴(大学、大学院、留学等)・学位・研究分野等をまとめ、大学・専攻分野毎でどのような差異・特徴が見られるのかを考察した。 上記12校において、文部省から設置が認可された専攻は、英文学に関する専攻が11校で最多、文学に関する専攻(国文学・日本文学、中国文学)が8校、歴史学に関する専攻(史学、東洋史学)が4校、地理学に関する専攻が2校と続き、哲学専攻・演劇学専攻・教育学専攻・社会学専攻が各1校に設置された。女性の専任予定教員者の経歴を考察すると、英文学・英米文学・日本文学・哲学・中国文学専攻の5専攻分野では、国内の旧制大学に進学して文学士号を取得した女性が見られる。女性の入学を認可した数少ない旧制大学(東北帝国大学法文学部、東京文理科大学、早稲田大学文学部、同志社大学文学部)に進学し、文学士号を取得した女性は13名確認された。1946年度入試から旧制大学でも男女の教育機会が均等となった後では、東京帝国大学(日本文学、英文学、中国文学)で文学士号を取得した女性が4名確認された。学部卒業後に研究の場を大学院や研究科に求めて、東北帝国大学大学院に2名、東京文理科大学研究科に3名、早稲田大学大学院に1名、東京大学大学院に2名、計8名の女性が進学しており、旧制大学院は研究者養成の機能を期待されてことがうかがえた。
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