研究課題/領域番号 |
17K04518
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
庄井 良信 北海道教育大学, 大学院教育学研究科, 教授 (00206260)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ピアグループ / メンタリング / 教師教育 / 臨床教育学 / 教育方法学 / フィンランド / オープンダイアローグ / コンサルテーション |
研究実績の概要 |
平成30年度は,前年度までにフィンランドとの共同研究活動を通して蒐集してきたPGC志向の教師教育実践に関する文献と実践データをさらに精査し,日本臨床教育学会において「教育者(educator)としてのアイデンティティの<新生>―リサーチベースの探究に寄り添う教師教育者」というテーマで研究発表を行った. また,両国において蒐集した参与観察記録と理論研究のデータを,英語のトランスクリプションに変換し,それらを基礎データとしてPGC志向の教師教育カリキュラムの臨床教育学的意義に関する理論仮説を構築し,その成果を,日本教育方法学会編『教育方法』第47巻において「教育方法学は教育実践をどのように語るのか―詩的・物語様態の定性的データに基づく省察と叙述の可能性」として発表した. さらには,フィンランドのオウル大学において実地調査と参与観察の記録に基づいて,大学の教師教育者が,学生(教員候補者/現職教員)とピアな関係性を構築しつつ高度な臨床的実践力を涵養する職能開発カリキュラム開発の可能性を探究し,北海道教育大学大学院臨床教育学研究室編『臨床教育学と保育・教育実践』第1号において「ピアグループメンタリングにおけるオープンダイアローグの構造図」として発表した. これらの研究を推進するために,リトアニアの教育大学のブレディキッテ博士(M. Bredikyte)とも協議を進め,教師教育者(大学教員)が,学修者の教育実践の省察と構想に,ピア(peer)な対話的探究者として思慮深く参画するコンサルテーション様態の教師教育カリキュラムに関する理論枠組みを構築することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
内外におけるPGC(peer group mentoring)志向の教師教育に関する文献と実践データを精査し,その一部を英語のトランスクリプションに翻訳変換し,それらを基礎データとしてPGC志向の教師教育カリキュラムの臨床教育学的意義に関する理論仮説を「ピアグループメンタリングにおけるオープンダイアローグの構造図」(上記『臨床教育学と保育・教育実践』第1号,38頁)として定式化しつつある. その成果は,2018年度に開催された日本臨床教育学会第8回年次研究大会及び,日本教育方法学会編『教育方法』(第47巻,123-135頁)のように,全国規模の学会水準の研究成果として発表することができた.また,北海道教育大学大学院研究紀要『学校臨床心理学研究』において,「学校臨床心理における叡智と思慮深さ」として今後の研究課題を整理することもできた. 北海道教育大学とオウル大学との研究協力協定の改定に伴い,実地調査と参与観察のデータに基づく協働省察は時間を要しているが,オウル大学の教師教育実践の一部は,庄井良信監訳『ナラティブ・ラーニング』(基礎編・臨床編)として,その草稿を編集することができた.リトアニアの教育大学のブレディキッテ博士(M. Bredikyte)との研究協議も順調に進められており,教師教育者(大学教員)が,学修者の教育実践の省察と構想にピア(peer)な対話的探究者として参画するコンサルテーション様態の教師教育カリキュラムの綱領も計画通り整理されつつあると判断できるため.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である令和元年度は,この2年間の研究活動の成果に基づいて,本研究の総括を行う.国内では,前年度までに構築したコンサルテーション様態の教師教育カリキュラムに関する理論枠組み(「ピアグループメンタリングにおけるオープンダイアローグの構造図」等)に基づいて,研究参加者の協力も得ながらPGCの実地調査を実施し,その参加者への半構造化面接と協働リフレクションを遂行する.それと同時に,フィンランドやリトアニアの教育大学等でもPGC志向のメンタリングに関する国際的な共同研究を推進する.その際,インターネット上の双方向遠隔動画配信による研究協議,現地調査での資料蒐集と参与観察を継続し,教師教育の現場で応用可能なPGCの典型カリキュラムを,臨床教育学の観点から構築する. そのことを通して,研究成果としては,PGCを基軸にした教師教育者(大学教員)と現職教師(実践者)との相互支援システム(高度な教職能力のエンパワメント)に関する理論と方法を浮き彫りにし,研究成果として論文発表する.これは教育系大学院における現職教師の研修や教職大学院における高度職能開発プログラムの構想にも大きく貢献できるものになる.また,教育系の博士課程としてのEd.D.型のカリキュラム開発にとっても有意義なものになる.その意味でPGCの国際的な協働省察は,わが国における高度な教師教育カリキュラムの構築に大きく貢献できると考えられる.最終年度は,これらの研究成果を,日本の関連学会や国際学会等で発表し,その成果を広く社会に還元する.
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