研究課題/領域番号 |
17K04520
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
土屋 直人 岩手大学, 教育学部, 准教授 (10318751)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 地域教育実践 / 教育実践史 / 教育運動 / 生活指導 |
研究実績の概要 |
本研究は、3.11東日本大震災後の東北沿岸被災地において行われている広義の「地域教育実践」の実態とその展開過程を継続調査し、その意義を考察することを目的とするものである。教師たちの語りを具体的に聴きとりその実践の実態と意義を確かめ、そこに内在する教育学的知見を検証することを試みる作業である。 5年間にわたる本科研費調査・研究の、初年度である平成29年度は、第一に、基礎資料として、本研究課題に関係する、特に3.11以前およびその後これまで公刊されてきた図書(東日本大震災とその後に関する記録(著書)や、教育学関連の著書等)、また教育関係雑誌の論文等の諸資料を収集・講読し、文献を通して基礎的事実や教育学的知見の基礎を把握・検討した。またその過程で、生活綴方教育論の震災後における意義等の再検討を試みた。 第二に、現場教師らが集い東北の教師も実践報告を行う研究会等に参加した。具体的には、教育科学研究会全国大会、東北作文の会研究会や岩手民教研、全教「つどい」のほか、岩手県生活指導サークル例会、岩手県教職員組合教研集会等にも参加した。これらの分科会等で東北の教師の実践報告と討論を聴き、報告資料を収集することを通して、実践動向や議論・論点の動向、現場教師の教育実践の実態把握を行った。 第三に、本年度は特に岩手・宮城県内の、被災地等の沿岸小・中学校(およびその近郊)の現地(本年度は、岩手県山田町、宮城県仙台市、等)に赴いての、小学校・中学校の実践者への個別の聞き取り調査を複数回行い、各教師の教育実践の歩みや現在の取り組み等に関する基礎的事実の収集・確認の作業を実地に実施した。その調査結果の一部は日本臨床教育学会全国大会で発表を行った。また、3.11震災前の元釜石東中学校教諭の当時の実践報告を検討し、同元教諭と共同研究論文を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度から研究3年度目にかけて継続的に行う予定である、(1)文献講読を中心に基礎的事実の収集・確認、(2)研究会等への参加を通した情報収集、(3)現地での聞き取り調査と資料収集、の3つの作業は、同時平行的にほぼ予定通りに実施できている。 特に上記(2)および(3)については、一定の調査の蓄積を得ており、その成果の一部は学会発表や論文のかたちで公表し得た。
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今後の研究の推進方策 |
上記の2つの作業を、同時並行的に継続してゆく。 なお、東北沿岸被災地の教育実践者の複数の方については既に面識があり知己を得、調査を着手しているが、新たに調査依頼が可能な現場教師の探索と、依頼を新たな課題にし、調査対象を広げる。各研究会などで未知の実践者の紹介を得ながら、新たに協力を広げ仰ぐ計画を立てる。今後とりわけ、福島の場合には津波被災に加えて原発災害(避難と離散、移転・移住、健康不安等)という事態があり、「浜通り」(沿岸)地域の教育実践の調査方法・対象の吟味を行いたい。
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