研究課題
基盤研究(C)
ルソーの自伝的著作群を彼の教育思想のメインテクストとして、とりわけ彼の「自己教育」「自己形成」のテクストとして捉え、「霊的修練」ならびに「記憶論」の視座から(教育)思想史的文脈の中で再読した。ルソーは、自伝的著作において内面性の探究の記憶を追憶するエクリチュールによって自らを顕示することで、そのような彼の存在や生き方を許容しない市民社会をその内部から告発したのであり、それは同時に、社会に抗い生きる「近代的個人」としてのルソーの自己形成の実践であったことを明らかにした。
教育思想史・教育哲学
これまで教育学研究においては『エミール』読解のためのサブテクストとして扱われてきたルソーの自伝的著作群を、彼の教育思想のメインテクストとして再読することで、社会に抵抗する自己形成の実践という、ルソーの人間形成論の新たな側面を提示した。また、ルソーの自伝的著作群を社会への抗いのテクストとして捉え直すことで、晩年のルソーが自伝的著作を書き続けたその動機の一端を明らかにすることができた。さらに、「自らについて書く」という実践の人間形成的意義の内実の一端も示すことができた。