研究課題/領域番号 |
17K04528
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
七木田 文彦 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (40431697)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 養護教諭養成 / 戦後教育改革 / 専門家 |
研究実績の概要 |
3年計画にて同研究課題へのアプローチを行うにあたり、初年度は、国立公文書館所蔵史料、国立国会図書館憲政資料室所蔵史料、国立教育政策研究所所蔵史料、筑波大学附属体芸図書館所蔵史料等で収集した学校看護婦/養護訓導/養護教諭関係史料の読解と検討、分析を行った。 学校における学校看護婦/養護訓導/養護教諭制度の成立は、特定の病弱児童から予防的にコントロールできる可能性をもった一般児童を対象に、健康で合理的な生き方を推進する機能の一端として、また、後の健康的生活を積極的に獲得するために着目された。他方、予防医学の発展によって、「演繹される生活態度の諸原理(医学や科学)に従属させようとする個人」を成立させようとする機能として準備された。疾病罹患の予測可能性が明らかになることによって、予防や健康増進が進められ、これにより、人々の生活が均質化された健康的ライフスタイルとして確立することをも意味しており、これを推進するために学校における専門家として検討・準備されたのである。 近年の行動科学化する「健康教育」は、これを人的機能の強化として一層促進しており、「高度な合理化と自己コントロール」が支配する社会への適応を迫っている。 以上の機能を支え、補完した人々(専門家)として、学校看護婦/養護訓導/養護教諭といった職種があげられる。学校において子どもの身体管理・健康教育を担った同職の誕生にも上記の課題と関わって紆余曲折の歴史があるが、戦前・戦中・戦後を通して制度化されてきた専門家の形成がそれである。戦後に国立養護教諭養成所法の成立とともにあらたな専門家の形成システムが一定の到達点として位置づけられる。同法の成立過程について、上記の史料群を中心として読解分析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、国立公文書館所蔵資料、国立国会図書館所蔵資料、国立教育政策研究所教育図書館所蔵資料等を中心に読解と検討、分析を進めている。具体的には、戦後国立養護教諭養成所法の成立過程の史料、戦時下の養護訓導制度関連史料、戦後教育改革期における教育刷新委員会関係資料等を収集し、読解と整理を行った。また、国立養護教諭養成所設置にあたる各所史料の探索とともにこれについての史料収集、GHQ/SCAP,CIE関係資料の史料収集も行った。その一端は、「公益財団法人日本学校保健会『学校保健の動向 平成29年度版』丸善、2017」の「第Ⅴ章 資料編 1.学校保健関連年表(1945-2017)ー附戦後養護教諭関係書籍年表ー』にまとめ、掲載した。また、2017年11月19日に青山学院大学にて開催された比較教育社会史研究会において、研究成果の一端を発表した。
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今後の研究の推進方策 |
進行状況がおおむね順調に進行していることから、今後、国立養護教諭養成所法成立に関する制度形成過程、誓願要求内容の分析、免許状交付についての議論と規程形成過程を中心として分析を進める。さらに、実態把握として、学校現場では専門職の要求がどのように形成さたのか、されていなかったのかについても、社会史的分析として、制度化と共に両側面の分析を進める。前年度と同様に国立公文書館史料、国立国会図書館史料、国立教育政策研究所教育図書室所蔵史料等については継続して読解を進める予定である。研究成果発表は、11月に大分市にて開催される日本学校保健学会第65回学術大会、3月に福岡市にて開催される第16回日本教育保健学会において研究成果発表を行う予定である。また、「学校保健研究」誌と日本教育保健学会年報への研究論文執筆と投稿を予定している。
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