研究課題/領域番号 |
17K04531
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
上杉 嘉見 東京学芸大学, 教員養成カリキュラム開発研究センター, 准教授 (10451981)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 教育学 / カリキュラム / メディア / 消費社会 / 広告 / 宣伝 / カナダ |
研究実績の概要 |
2年目の今年度は以下の2つの課題に取り組んだ。 第1に,ブリティッシュ・コロンビア(BC)州で刊行された消費者教育の広告教材の分析である。具体的には,同州で1970年代に消費者行政機関が作成した教授用資料と,80年代に教育省が中心になって編集した資料集を比較した。 分析の観点は両資料における広告の捉え方とした。70年代の資料には広告と大量消費を結びつけて問題視する姿勢が見られ,そこには消費者の生活に一定の責任を持つという行政機関としての使命感ないし自己理解が表れていた。それに対して教育省が主導した80年代の資料集の広告の節には,70年代の資料が引用されることはなく,その代わりに広告の自主規制団体と大手日用品メーカーが作成した生徒向けの資料が掲載されていた。それは,広告が持つ問題に目を向けず,広告主の立場からの広告のPRに終始するものであった。この資料を採録した教育省からは,学校教育の公共的性格を後退させ,新自由主義を先取りしようとする姿を見て取ることができた。なお,この研究成果については,日本教育学会第77回大会で発表を行った。 第2の課題は,おもにサスカチュワン州議会図書館で実施した,1970~90年代に刊行された消費者教育についての文献調査とその分析である。同州の消費者行政機関は1972年の設立後,広告の問題に特化した教授用資料を刊行した。また,87年には初等社会科のなかで実施する消費者教育の教材を発表し,92年には国内6州の消費者行政機関と共同で中等教育用消費者教育の教材を作成している。これらの教授用資料および教材についても,BC州のケース同様,広告の捉え方に注目して分析に取りかかった。現時点でこの作業は完了していないが,70年代の資料の内容については,当時の広告をめぐる論争点が概ね反映されながらも,大量消費の問題への意識が弱い傾向を確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,学会発表を実施することができた。また,サスカチュワン州の消費者教育関連資料を計画通りに収集することができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,これまでに収集した資料の分析を継続する。具体的には,広告教材の展開を州のあいだで比較し,時代ごとに典型的と考えられる内容および方法を抽出する作業に取り組む。この過程で不足する資料があれば補いつつ,研究論文の執筆を進めていく。
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