本研究の目的は、1950~60年代の戦後日本の漁業地域において、家庭や地域を巻き込んだ学校内外にわたる生活指導がどのように展開されたのかを明らかにすることにある。2017年度は、次のような調査研究を行った。 第一に、戦後の「ことばなおし」や「方言矯正」に関する理論と実践を検討するため、関連する著書や雑誌記事等を収集した。また、話しことばの教育に関する歴史資料を、国立国語研究所研究図書室や国立国会図書館等において調査収集した。この作業によって、当該時期における漁業地域を含めたことばなおしと方言矯正の全体的な動向を概観することができた。 第二に、1960年代にことばなおし実践を行った、千葉県漁業地域の公立小学校の校長が著した学校報告書や私家版の実践記録資料、および地方新聞記事を、千葉県立中央図書館、千葉県総合教育センター、銚子市公正図書館等において調査収集した。ことばなおし実践に至る経緯、その取り組みをめぐる教育界の反応、漁民たちの受け止め方などがうかがえる資料を入手することができた。 第三に、千葉県の漁業地域における青少年健全育成の活動状況やことばなおし運動を題材にした2点の記録映画フィルムを探索した。照会・調査先は、実践の舞台となった銚子市の公立小学校をはじめ、千葉県総合教育センター、銚子市視聴覚ライブラリー、映画フィルム保存機関等である。しかし、現時点では映画フィルムの現物を発見するには至らなかった。そのため、次年度以降も継続的に調査を進める予定である。
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