研究課題/領域番号 |
17K04536
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
岸野 麻衣 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成・院), 准教授 (80452126)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 保育者の専門性 / 園内研究会 / 省察 |
研究実績の概要 |
本研究は,保育実践について語り合う園内研究会において,保育場面から何をどう見て取り出してどう語るかという保育者が実践を省察する力量の問題に焦点を当て,「保育を見る目・語る力」として概念化し,こうした力量を形成する背景の園内コミュニティや社会・文化・制度的文脈を明らかにしようとするものである。 本年度は,保育者たちの語りがどのように変容したのか,より長期的な展開の中で検討を行った。具体的には,前年度と同じ園を対象とし,年間継続して園内研究会に参加し,参与しながら観察を行った。 地区の大きな研究大会で実践発表を行うことになった園では,園内研究会で各クラスの保育を検討していきながらも,発表を行う事例について何度も語り合ったり,事務的な担当も行う必要があったためにそれぞれの保育者に役割が当たるようになったりし,各自のコミットメントが増した。園内研究会での語りは,特定の場面での子どもの表層的な姿を語ることから,子どもの具体的な姿をもとにそのプロセスや周囲の子にも開かれた語りが見られるようになった。そして出来事や姿をどう捉えたかだけでなく,子どもの思考の解釈や評価にまで語りが及ぶようになった。保育者の姿についても,外側から観察者として評価する視点から,場面を自分のこととして捉え,経験に照らして子どもの思考や遊びの方向性を探るようになっていった。その背後では,研究会が単なる報告スタイルから共感的に対話するスタイルとなり,さらに人事異動で職員の年齢構成や立ち位置が変わっていき,組織の中での役割意識に変容が生じたことが影響していることがうかがえた。 このように,事実の語りとそれに対する参観者の解釈,保育の在り方への言及が,研究会の場や園の状況によって連動していることが明らかになった。保育者の力量を個人の問題に帰属するのでなく,園の状況や背景も含めて捉え直していく視点が見えてきたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,2年次は,各園において行われている園内研究会での保育の語りと園を取り巻く文脈について,継続的にデータを収集しており,長期的な展開の検討を行ったため,おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
3年次においても,継続して各園の園内研究会に参加しながら,データ収集を行い,さらに長期的な展開の中で,保育を見る目・語る力がどのように変容していくのかを検討しつつ,研究のまとめを行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初11月に国際学会に参加を予定していたが,本務のため参加が不可能になったこと,また当初研究補助を依頼予定だった者が都合により不可能になったこと等,突発的な出来事が重なったため次年度使用額が生じた。次年度は改めて9月の国際学会への参加を予定しているほか,研究補助の依頼も改めて行う予定である。
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