森有礼文相の下で教育政策が展開したいわゆる「森文政」期を、「天皇制/国家主義的教育体制の確立期」と捉える史観は過去のものとなりつつあるが、その性格をいかに再定義するか、いまだ確たる見解が存在しない。 帝国大学史研究、徳育・教育勅語制定史研究など、別個に進展してきた研究史を総合的に俯瞰し、森文政期の再検討を図った。特に中等教育行政とその実態に焦点をあて、森自身の行動と思想にも考察を加えた。大久保利謙編『森有礼全集』(1972)を超える史料の開拓を重視し、(1)当該期の府県下中等教育(2)在米女子留学生にみる森のキリスト教観(3)森の「不敬」行為と暗殺死(4)後世の森像形成過程、を分析した。
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