研究課題/領域番号 |
17K04545
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
相澤 伸幸 京都教育大学, 教育学部, 教授 (20331259)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 教育哲学 / 宗教教育 / ニヒリズム / エミール |
研究実績の概要 |
これまでの本研究を通して、現代教育学において、発達という概念(観念)は揺らぎつつあるという認識に至っている。これまで重要視されてきた「発達」は教育を推進するだけの力を持ち得ているのか。持続可能で精一杯の中で、新しい教育観はどこにスタンダードを置いていくのか。それとも、スタンダードすら設定できない状況になっているのか。そのような揺らぎの状況をニヒリズムの1つの先行的兆候として捉え、そこまでに至る潮流の中での源流を描き出すことを今年度の課題とした。 上記の課題に対する考察をまとめたものが、論文「『エミール』における宗教教育の教育史的意義―私教育に着目して―」である。ルソーのエミールが発達を基調とした教育論を展開したことは教育思想において定説として語られているが、ルソー自身、公的な制度などの公教育を主として語るのではなく、私的な教育と宗教をルソーはここで語りたかったのであると強調した。 啓蒙思想を近代化の一つの源流と捉えた場合、啓蒙思想は現在のわれわれにM・ヴェーバー(1864-1920)が指摘したような脱宗教化、あるいは教会側の権力の排除などの宗教的中立性などをもたらしたとも考えられるが、『エミール』を再評価するならば、私的な宗教教育、すなわち宗教教育の世俗化および個人化が提案されたと考えることもできる。その中で、個人や価値観の多様性、あるいは自由を求める時代的な精神構造が、その反作用としてのニヒリズムをも生み出したのであると考えた。この論文は、査読を経て、研究学会誌に掲載された。 また、海外の教育状況を視察する目的で、タイの教育大学を訪れるとともに、ミャンマーの仏教教育の状況を視察してきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画にそった課題に対応し、論文にまとめて掲載されたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの影響により、学会や研究会が中止になり、発表する機会が限られつつある。また予定していた出張ができなくなり、ドイツやフランスにおける学校調査が中断している。今後の状況を注視しながら、できることから着手し、最終年度としての計画を再調整する必要があると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、学会や研究会や調査が中止になり、予定していた出張ができなくなったために次年度使用額が生じた。 社会状況を注視しながら、最終年度である次年度で、計画を修正する予定である。
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