研究課題/領域番号 |
17K04546
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡部 美香 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (80294776)
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研究分担者 |
小野 文生 同志社大学, グローバル地域文化学部, 准教授 (50437175)
下司 裕子 (北詰裕子) 東京学芸大学, 教育学部, 講師 (30580336)
室井 麗子 岩手大学, 教育学部, 准教授 (40552857)
白銀 夏樹 関西学院大学, 付置研究所, 准教授 (00335712)
杉田 浩崇 愛媛大学, 教育学部, 講師 (10633935)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アナロジー / 事例 / 思想史 / 近代教育学 / 全体性(ホリスティック) |
研究実績の概要 |
本研究は、従来の近代教育学が追求してきた実証科学的に説明可能な(すなわち、evidence-basedな)知に回収されないような知、具体的には例やアナロジーで語るしかないような知が、人間の生成・変容や教育といかなる連関にあるのかを、思想史的手法を用いて解明するものである。この解明に際し、本研究では、実証科学と親和的な形で近代教育学が成立した18世紀、および実証科学と近代教育学が加速度的に発展・展開すると同時に、それらに対抗・抵抗する思想とその思想に基づく教育学が構想された19~20世紀転換期に焦点を当てる。これを通して、最終的に、近代教育思想史のなかにある(あった)合理化一辺倒ではないいくつもの思想の筋を掘り起こし、辿り直し、近代教育思想・教育言説の別様の筋立てを構想し直すことをめざす。 初年度にあたる平成29年度は、まず、研究代表者・研究分担者で研究会を開催し、本研究の目的と手法について共通理解を図るとともに、各自の達成課題を確認した。また、各自の専門性を活かして、2つのグループを作成した。1つめのグループでは、実証科学と親和的な近代教育学の黎明期でありかつ学問諸領域が未分化であった17~18世紀を岡部(カント・ルソーの人間学)・小野(ロマン派)・室井(ディドロ)・北詰(コメニウス)が担当する。2つめのグループでは、実証科学が加速度的に発展・展開・分化し、その動向に対して批判・抵抗する思想や運動も興隆した19~20世紀の世紀転換期を岡部(人間学・人類学)・小野(ベンヤミン等のユダヤ思想)・白銀(アドルノ)・杉田(ヴィトゲンシュタイン)が担当する。 さらに30年度の課題として、アナロジーおよびその近接・類似概念(メタファー、アレゴリー等)を整理すること、また「分有」概念の思想的系譜を確認し共通理解を図ることの必要性が提示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、各自が達成課題を確認した上で、それぞれに史資料の収集、文献調査・講読、分析・考察を進める予定であった。3月に行った研究会では、それぞれが研究の途中成果を持ち寄って発表し、当初の予定が順調に達成されていることが確認された。また、発表のなかで全員に共通する課題がよりいっそう明らかとなり、「研究実績の概要」の末尾にも示したように、アナロジーおよびその近接・類似概念(メタファー、アレゴリー等)の整理や「分有」概念の思想的系譜の辿り直しといった課題が具体的に確認された。加えて、次年度に海外で共同の学会発表を行うことで成果を公にする計画も立案することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度も、平成29年度に引き続き、個別の思想史研究を研究代表者・研究分担者がそれぞれに遂行する。その成果を集約、比較検討し(10~11月にかけて研究会を実施)、12月にニュージーランドで開催される Philosophy of Education Society of Australasia のシンポジウムで発表する。その際、研究協力者である加藤守通氏に、中間成果を評価していただく。平成30年度のこれらの活動の成果をうけて、平成31年度以降は、例示・アナロジー的な思考と人間の生成・変容および教育的な営みとの連関を軸とした、従来とは異なる近代教育思想史の構想をめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に海外での学会発表を計画したため、その旅費をこの次年度使用額と次年度の助成金とで支出する計画である。
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