研究課題/領域番号 |
17K04549
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
川地 亜弥子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (20411473)
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研究分担者 |
勅使河原 君江 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (60298247)
赤木 和重 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (70402675)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 教育評価 / 意味深さの評価 / ディープ・アクティブ・ラーニング / 作文教育 / 美術教育 / 特別支援教育 |
研究実績の概要 |
意味深さの評価に関する調査として、英国においては、学会・研究会に2回参加し情報交換を行い、学校訪問・聴取調査を3校で行った。日本においては、学会・研究会に3回参加し情報交換・研究発表を行い、科研費の補助外で学校訪問・聴取調査を随時遂行した。なお、比較対象として、英国での学会参加に付随して、スウェーデンのウプサラで意味深さの評価に関する調査を1校1園で実施し、特に第1言語ではない学習環境下における意味深さの評価について示唆を得た。 英国における興味深い動向として、話し言葉の能力(Oracy)に焦点を当て、英語を第1言語としない子どもたちの指導とその評価に関する研究・研修を活発に行っていることが明らかになった。これらの研究を通じて、学校教育において、すべての子どもたちに学ぶ権利を保障し、就労時等の不利益、格差を解消するという目標だけでなく、身振り,表情なども使った効果的な交流,およびその中で新しい考えを創造するインターシンキング(Littleton, K. & Mercer, N.,2013)等も含めて、目標を位置づけるべきだとの主張が行われていた。 Oracyの評価については、Oracyを個人に属する「話す力」と捉え、感情、認知、身体、言語の4つの観点から「測られる」と述べる学校もあった。一方、話すことが苦手な子ども、特別な支援が必要な子ども、英語が第一言語でない子どもにとっても、授業やとりくみが意味深いものとなるようにアート等を活用し、子どもがうまく話せなくとも支援者・指導者や友達が様々に読み取っていることも明らかとなった。多様性に寛容な場を創造し、共感的な支援を行う中で、意味深さの評価を行っている可能性が示唆された。日本の作文教育・生活綴方と類似した教育実践と評価の構造を有しているとの仮説を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目標は、日英の意味深さの評価を明らかにすることであった。この時、主に想定していたのは学校での主要言語と子どもたちの第1言語が一致している状況であった。しかしながら、英国に加え、スウェーデン調査を行ったことにより、学校での主要言語が第1言語ではない子どもたちについての意味深さの評価を加える必要性が示され、より発展的な分析視角を得ることができた。 これにより、以下の3つの国内実践との比較について、新しい手掛かりを得ることができた。①言語以外の素材を通じた豊かなコミュニケーションが可能な美術教育、②教科書に示された標準語・文化と、地方の言語(方言)と文化の葛藤を議論してきた生活綴方・作文教育、③特別支援教育成立以前からの多様なニーズにこたえる障害児教育。これらは、本研究の3つの柱となっている。日本の教育における意味深さの教育との関連について、新しく重要な手掛かりを得ることができたと言える。 加えて、日本国内において、他教科の研究者からも研究成果発表を求められるなど、当初よりも広い領域への貢献の可能性が示された。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は最終年度であり、これまでの研究を総括するために研究報告書を作成する。9月にはドラフトを作成し、後期に協力校・協力者などに了承を得て、3月の公開を目指す。意味深さの評価に関する調査、学校訪問、学校等での研修協力、報告書公刊等の計画は以下の通りである。 前期 4月 研究代表者および共同研究者による最終報告書公刊に向けた打ち合わせ。/5月 英国の学校訪問及び Oracy カンファレンス打ち合わせ。/6月 国内の研修等への協力。/7月 上記調査実施。第2言語によるストーリーテリングにおける意味深さの評価に関する調査打ち合わせ。/8月 英国からの調査への協力。/9月 世界授業研究学会参加、調査に関する打ち合わせ、情報交換。英国での学校訪問、研究成果報告書公刊に関する打ち合わせ。英国における第2言語によるストーリー手リングにおける意味深さの評価に関する調査実施。 後期 10月 報告書のドラフトの検討。/11月 国内の研修等への協力。/12月 英国における特別支援教育に関する調査および学校訪問。/3月 最終報告書公刊。最終報告書をもとにした英国での意見交換。 ※ 国内調査・研究発表は随時行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度末に予定していた英国での研究調査が2019年度7月へ変更となったため。7月の方が研究対象校の都合がよく、年度末のため様々な資料提供、確認等が行いやすいとのことであった。このため、英国調査1名1回分に相当する29万円を次年度使用とした。
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