研究課題/領域番号 |
17K04552
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
河合 務 鳥取大学, 地域学部, 准教授 (10372674)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 学校衛生 / 子ども観 / 疲労 / ビネー / 知的衛生 |
研究実績の概要 |
本研究は学校衛生論の源流のひとつであるフランスの学校衛生論史における「衛生」概念の特質と影響力を解明することを目指し遂行される。科学研究費助成事業基盤研究(C)の初年度である2017年度は当初からの計画通り、1910年にパリで開催された第3回「学校衛生国際会議」の議事録を精査することによって、フランス公教育省関係者を含めた多くの教育関係者、衛生行政関係者らの議論の内容を分析した。具体的には①第3回学校衛生国際会議で議論された「疲労」問題、②同会議第9分科会「学校衛生との関係における教育課程と教育方法」の名誉議長で心理学者のアルフレッド・ビネー(1857‐1911)の子ども観と「疲労」問題をめぐる議論、③同会議に参加した医学博士L. デュフェステルの学校衛生関連著作を俎上にのせ分析した。当時の学校衛生論の文脈において①の「疲労」問題は身体衛生から精神衛生へという視座の転換をもたらした重要論点であることが浮かび上がり、②のビネーの「疲労」問題への言及内容の分析から、ビネーが開発・改良に努めた知能検査に内包される子ども観が、「知能」という視点による子ども集団の分類を可能にする道具を教育現場に提供するものであり、アメリカなどの諸外国への影響も含めて看過できない問題を投げかけるものであったことが明らかとなった。また、③のデュフェステルの学校衛生著作では、「疲労」問題が「知的衛生」という概念枠組みで論じられており、ビネーの知能検査を学校場面で適用することが推奨されてていることも明らかとなった。 こうした研究成果は拙稿「学校衛生と子ども観――20世紀初頭フランスにおける子どもの疲労問題と『知的衛生』」『地域学論集(鳥取大学地域学部紀要)』(第14巻第2号、2018年3月、167~177頁)として発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に沿って第3回学校衛生国際会議(1910年)の議事録を精査し、そこでの議論の内容から「疲労」問題の重要性が浮かび上がってきたことから、この問題に関連する議論や論者を検討の俎上にのせ、当時の学校衛生論の文脈における「疲労」問題の位置づけを明らかにすることができたため、研究はおおむね順調に進展しているものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
当初からの研究計画に沿って2018年度は①子どもの身体管理技法を分析するとともに、②2017年度からの研究を継続し、知能検査を含めた子どもの「測定」技法について、学校衛生論の観点から分析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
関係する文献の発注が間に合わなかったため次年度使用額が生じた。次年度早期に発注することによって関係文献を蒐集する。
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