研究課題/領域番号 |
17K04552
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
河合 務 鳥取大学, 地域学部, 准教授 (10372674)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 学校衛生 / 産育 / 乳幼児死亡 / 堕胎 / 衛生教育 / 学校管理法書 / 訓育 / 子ども観 |
研究実績の概要 |
科学研究費助成事業基盤研究(C)の研究課題(17K04552)2年目の2018年度は、研究実施計画に即して(1)学校衛生関係文献を「不衛生」な環境の排除という視点から分析し、(2)学校衛生と児童保護運動との関連性を特に乳幼児死亡の防止に焦点化して分析する研究作業に取り組んだ。特に1902年にフランス政府が設置した「人口減退に関する委員会」の下位組織「死亡率に関する小委員会」によってまとめられた『死亡率の原因に関する総合的報告』(1911年)をとりわけ注目すべき史料として取り上げ検討を行った。その結果、①19世紀後半にルイ・パストゥールとその学派よって発展した細菌学の影響が学校衛生の分野に応用されていく具体な様相、②堕胎の抑制、死産の回避、母親による授乳の奨励、母親への衛生教育など産育のあり方の改革が国家的課題として議論されていたこと、の2点を明らかにすることができた。こうした研究成果を拙稿「学校衛生と産育――乳幼児死亡の回避可能性をめぐる20世紀初頭フランスの動向――」『地域学論集(鳥取大学地域学部紀要)』(第15巻第1号、2018年10月、93-100頁)として発表した。 さらに、フランスを含む西洋の学校衛生論を日本に伝えた媒体として明治期の学校管理法書の翻訳動向を検討し、検討課題の1つである子どもの「身体管理」技法について研究的な端緒を得ることができた。この研究成果を拙稿「生徒指導の源流と訓育概念の形成――明治前期の翻訳学校管理法書とdiscipline――」『地域学論集(鳥取大学地域学部紀要)』(第15巻第3号、2019年3月、33-41頁)として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の「研究の目的」「研究実施計画」に照らして、ここまで2年の進捗状況を点検した場合、研究成果を3編の研究論文として発表し、フランスの学校衛生論の内容を(1) 「不衛生」な環境の排除、 (2) 子どもの「身体管理」技法の開発、(3)「清潔」観の内面規範化、(4) 子どもの「生命」保護を目指した学校外の諸実践との関連性、という当初設定した4項目の研究視点に関して具体的に検討を行うことができていることから、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究においては①20世紀初頭における学校衛生論の台頭という事態を受けて、どのような特徴をもつ教育学の構築が目指されたのかを考察すること、②フランスの学校衛生論の精神衛生化の動向について考察すること、この2点を重点項目とし、具体的に検討する史料の特定・追加・分析を行っていくという方向で研究を推進してくこととしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内・海外の図書館への文献複写の発注・受取に係る手続きに想定よりも時間がかかったこと、また、物品購入に係る手続きにおいて業者側のミスにより別の物品が届き返品する必要が生じるなどしたため次年度使用額が生じた。 当該使用額を翌年度分と合わせて物品費および文献複写費として使用する計画である。
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