研究課題/領域番号 |
17K04552
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
河合 務 鳥取大学, 地域学部, 准教授 (10372674)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 学校衛生 / コロニー・ド・ヴァカンス / 貧困家庭 / 疲労 / 転地 |
研究実績の概要 |
本年度はフランス学校衛生論におけるコロニー・ド・ヴァカンス(林間学校)を俎上にのせ、その具体的な活動内容、導入の経緯、子ども観、衛生概念の内実等を考察した。学校衛生におけるコロニー・ド・ヴァカンスの位置づけに関しては、学校衛生国際会議でも議題の1つに取り上げられていたにも関わらず、教育史研究の主題とされることは多くなかった。本年度の研究作業では1880年代に公教育へのコロニー・ド・ヴァカンスの導入を積極的に進めたコティネの事業方針やコリノー、ラビ/ポランによるフランスの学校衛生著作を史料としてコロニー・ド・ヴァカンスの活動内容と学校衛生上の意義や位置づけについて検討し、①子どもの疲労問題、②貧困層の家庭環境の問題に対処する文脈でコロニー・ド・ヴァカンスの重要性が論じられていることが明らかとなった。さらに都市部の学校衛生の弱点となりがちな換気や採光などの問題をクリアする郊外・田舎への転地の効用、そして「自然への回帰」の視点からもコロニー・ド・ヴァカンスは学校衛生論の一角に組み込まれるようになったことも明らかとなった。さらに、コロニー・ド・ヴァカンスは20世紀初頭から欧米各国で興隆する「野外学校」の源流の1つとなった点も教育史研究として重要であると考えられるが、これについての詳しい検討は今後の課題とする。 なお、筆者はこうした研究成果を拙稿「フランスの学校衛生とコロニー・ド・ヴァカンス――19~20世紀転換期における教育と転地療養――」『地域学論集(鳥取大学地域学部紀要)』第17巻第2号、2020年73~80頁、にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
学校衛生におけるコロニー・ド・ヴァカンス(林間学校)の位置づけについての研究成果を得ることが出来たものの、それを探求する上で必要となる史料の蒐集が、コロナ禍による航空便の遅滞などによってやや滞ってしまったため、このように判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は昨年度滞りがちであった史料蒐集を粘り強く継続し可能な限り蒐集する。そのうえでフランス学校衛生論と野外学校の関連性について考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
世界的なコロナ禍によって、移動制限や配送の遅滞による史料蒐集の遅れ、研究設備・機器へのアクセスの制限等によって次年度使用額が生じた。 次年度使用額は主に史料蒐集と研究成果のまとめに使用する予定である。
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