本研究は記録の残らない社会的に最も脆弱な子どもたちが、教育を受けたのち、どのような人生を歩んだのかの一端について明らかにした。これはこれまでの先行研究では明らかにされてこなかったものである。浮浪児の多くが貧困あるいは親からのネグレクトを理由に就学支援を受けた子どもたちであり、日本のみならずグローバルに子どもの貧困・虐待が問題視される今日にあって、「生きること」において就学が果たした役割と課題、社会的に最も脆弱な子どもたちを社会の通常のメンバーとすることを可能にした要因を具体的に明らかにした。この点は、現在の虐待児や極貧児に対する支援に歴史的示唆を与えるものである。
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