研究課題/領域番号 |
17K04558
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
櫻井 佳樹 香川大学, 教育学部, 教授 (80187096)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 教養 / Bildung / 日独 / 比較思想史 / フンボルト / ロマンチックラブ / 大正教養主義 |
研究実績の概要 |
平成30年度の研究成果を、まず第1に「ロマンチックラブからみたフンボルトの恋愛結婚と教養理念」(教育哲学会『教育哲学研究』第118号、2018 P.93-108)にまとめた。これは各号1人に依頼された「エッセイ」であるが、論文としての体裁を含んだ価値あるものである。次に大関達也(兵庫教育大学)とともに、「教育学における他者論の問題」(坂越正樹監修、丸山恭司・山名淳編『教育的関係の解釈学』東信堂 2019年、P.97-112所収)を執筆した。筆者は「陶冶論から見た他者の問題」を扱い、(1)教育と陶冶(2)フンボルトの陶冶論(3)フンボルト陶冶論における「他者」(4)「陶冶」概念の修正と「他者」について論じた。 本研究は、日独における「教養」(Bildung)概念の比較思想史研究を通じて、18世紀末におけるBildung概念の成立・展開とその特質、並びに20世紀10-20年代日本の「大正教養主義」における「教養」概念の成立・展開とその特質を明らかにするとともに、両者の異同を明らかにすることを目的としている。したがって、これら2つの研究成果は前者、18世紀末におけるBildung 概念の成立・展開とその特質の解明を目的とした研究に寄与するものである。自我(個人)と世界の相互作用の中にBildungの本質を見るフンボルトの理論の解釈は多様であるが、シュレジンガーの『ヴィルヘルム・フォン・フンボルトのBildung論における疎遠なものや他者なるもの』などドイツで収集したテキスト等に依拠して、「他者論」的視点からBildung概念の特質を解明した点で新規な研究成果を提供できたと言える。 後者については、1930年代昭和初期の三木清の教養論を含め日本における教養論の成立にドイツBildung論がいかなる影響を与えたか、収集した資料を幅広く読解中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度において、平成30年度の課題としてまず第1に、平成29年度より着手した第1の研究課題を継続することによって「陶冶論から見た他者の問題」として研究成果にまとめるという課題を挙げていた。大関達也(兵庫教育大学)とともに、「教育学における他者論の問題」(坂越正樹監修、丸山恭司・山名淳編『教育的関係の解釈学』東信堂 2019年、P.97-112所収)を執筆し、その一部として、筆者は「陶冶論から見た他者の問題」を扱い、(1)教育と陶冶(2)フンボルトの陶冶論(3)フンボルト陶冶論における「他者」(4)「陶冶」概念の修正と「他者」について論じた。シュレジンガーの『ヴィルヘルム・フォン・フンボルトのBildung論における疎遠なものや他者なるもの』などドイツで収集したテキスト等に依拠して、「他者論」的視点からBildung概念の特質を解明した点で新規な研究成果を提供できたと言える。 第2の課題は、「日本の『大正教養主義』における『教養』概念の特質を明らかにすること」であり、それにかかる基礎的な文献の収集と読解であった。第1の課題に比して、まだ研究成果としては現れてはいないが、次年度の研究成果の発表のために研究を進めていることは間違いない。現在1930年代の三木清の教養論を読むことから彼の1910年代の教養理解が,その後大きく変容していることが明らかになった。したがって1930年代も含めて日本における教養概念の成立と展開について、研究成果をまとめている途上にある。平成31(令和元)年11月30日~12月1日開催の中国四国教育学会(松山大学)にて発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成31(令和元)年度は、最終年度としてまとめの年に当たる。第1の課題については、継続して研究を進め、教育思想史学会の学会誌に投稿する。第2の課題については、11月の中国四国教育学会で発表し、研究成果にまとめる。また9月下旬或いは10月下旬に渡独し、ドイツ教育学会関連学会、またはフライブルク教育大学で「日本の教養概念の成立と展開」を軸に、講演する予定である。それらを通して、本研究課題である「日独における『教養』(Bildung)概念の比較思想史研究」を推進し、両概念の異同や影響関係について明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の研究成果の発表に関して、ドイツでの学会発表を予定しているが、それに加えて、フライブルク教育大学での招待講演の依頼が来たため、滞在期間の延長等が予想される。そのため本年度の予算の残余分を次年度の旅費として使用するよう計画を修正したためである。
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